予想だけでも動く為替レートと資本

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為替レートが現在の日本で大きな関心事だ。円安が進行していることを好感して、株価は上昇している。では、為替レートはいかなる要因で決まるのか? 将来どう動くか? 以下では、こうした問題について考えることにしよう。

これまでも強調してきたように、現在の世界経済で為替レートを決めるのは、国際的な資本移動だ。経常収支の動向ではなく、各国の金利動向が影響を与える。金利といってもさまざまな期間のものがあるが、経験的には、2年債の金利差との相関が高いといわれる。2008年以降の推移を示すと、図の通りだ。

04年からの円安は、日本の介入だけによるものではない。図にはないが、日米の2年利回りの差が05年から07年頃は4%程度もあったため、円キャリー取引(円をドルにかえて運用する取引)が増加したからだ。

ところが、経済危機後、各国が金融緩和を行ったため、金利差は縮小した。最近の日米2年債金利差は、わずか0・1%程度である。日本で金融緩和を進めても、2年債利回りがすでに0・1%程度の低水準なので、これ以上低められない。したがって、為替介入を行っても、円安にならない。少なくとも、04~07年頃のような円安の再現はできない。

しかし、前回述べたように、海外要因が変化すれば、変化する。特にアメリカの金融政策とユーロ危機の動向が大きな影響を与える。ユーロ危機が収束に向かえば、資金の流れは変わるだろう。今の日本への資本流入はセイフヘイブンへの一時的退避なので、すぐ流出する。これは日本経済にとって望ましい動きではない。

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