三陸鉄道の社長が最後に伝えたかったこと 「震災」「あまちゃん」、激動の6年を経て退任

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三陸鉄道本社。日常の姿が戻りつつある

――決まるまでやきもきしたのでは?

今だから言いますが、7月に大畠章宏国土交通大臣が現地視察に来たとき、「心配するな。きちんと予算を付けるから」とささやいてくれたんです。当時の鉄道局長も「びっくりするなよ」と言った。「あ、これは予算が付くぞ」と思いました。だから、やきもきするということはなかった。

――工事は予定どおり進んだのですか

鉄道・運輸機構が全面協力してくれればできると思っていました。2011年6月に同機構の理事長が現地視察に来て、私が案内しました。この人は昔からよく知っていて、14~15年前に私が県で並行在来線対策を担当していたときに鉄道局長だった。そのころは会うたびにバチバチやりあっていましたが、今回は「全面協力する」と即答してくれました。人と人とのつながりは大事だと思いましたね。

「あまちゃん」は台湾でも人気

――「あまちゃん」効果も大きかったですね。

北リアス線に堀内という駅があります。「あまちゃん」の袖ケ浜駅ですね。去年の秋にこの駅に行ったら、駅に3人の若い女性がいて、トンネルに向かって「アイドルになりたーい」って叫んでいる。でもなんか雰囲気が違うと思って彼女たちに聞いてみたら、「台湾から来ました」だって。「あまちゃん」は台湾では再放送までされるくらい人気なんです。昨年、台湾からのツアーのお客さんだけで1500人乗っています。

――日本では「あまちゃん」の放映が終わってもうすぐ3年になりますが、最近の利用状況はどうですか。

お客様の数は2015年にガクンと落ちました。最大の理由は北陸新幹線です。首都圏のお客様がみんな北陸に行ってしまった。東京から盛岡まで2時間10分ですが、宮古へはさらに2時間半かかる。距離と時間がどうしても北陸とは違う。でも今年は北海道新幹線が開業したので、北海道からのお客様とか函館に行ったお客様に帰りに来てもらうといった動きが増えています。

――被災したJR山田線の宮古―釜石間がJR東日本による2018年度の全線復旧後に三陸鉄道に移管されます。しかし、先に復旧した区間から順次開業するほうが利用者にとって使いやすかったのではないですか。

三陸鉄道としても、直ったところからどんどん動かしたいという意向はあります。「あそこまで開通したから、来年はうちも開通する」という地元の人の心理的効果も大きいですから。でもネックがありまして、CTC(列車集中制御装置)の構築が間に合わない。3年かかるんです。先行開業した区間はCTCが使えず、手旗信号でやらないといけない。ものすごく人手がかかります。

それから山田線には踏切が50カ所以上あります。三陸鉄道は高架が多いので踏切は3カ所しかない。踏切の管理をどうするんだという問題もある。一部先行開業は現実問題として厳しい。

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