円安で稼いだ日本企業は、円高に震えている 経営者が頼れるのは、もはや賃下げだけ?

✎ 1〜 ✎ 250 ✎ 251 ✎ 252 ✎ 最新
拡大
縮小

円相場が1ドル=80円だった際、日本の多国籍企業が稼ぎ、日本に送金した1ドルは80円と計上されたが、円相場が1ドル=125円に下落すると、日本に送金された同じ1ドルが、今度は125円と計上される。

このため日本企業の海外子会社の利益が1ドル、1ユーロ、1ポンド、1ペソ、あるいは1人民元たりとも増えなかったとしても、自国での帳簿上では大幅な増益となった。現在の円高局面では、これとはまったく逆の現象が起きている。

円安という、会計上の幻影による利益を押し上げる要素がないと、日本企業は今後も賃金抑制に頼る公算が大きい。過去15年間、日本企業は売上高が減少しても利益を出す方法を学んだが、これは賃金削減によって実現したものなのだ。

稼ぎが減れば買わなくなる

日本の大企業5000社の値を合計すると、従業員1人当たりの売上高は1996年比で5%増加したにもかかわらず、賃金と手当は同年比で5%削減されている。この結果、大企業の従業員1人当たりの営業利益は同年比7割増加した。

しかし、企業の幹部が忘れてしまっていることがある。人々の稼ぎが減れば、企業の製品を買う人も少なくなる、ということだ。

週刊東洋経済6月25日号

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT