「レ・ミゼラブル」仕掛け人の"感動の極意" ヒットの秘訣を豪語する人間はウソつき

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多額の借金を背負ってスタートした

――キャメロンさんのようにエネルギッシュに活躍したい人も多いと思います。そこで若きビジネスマンたちにアドバイスをいただけないでしょうか?

Cameron Mackintosh(キャメロン・マッキントッシュ)
ブロードウェイミュージカル歴代ロングラン作品ベスト3を記録する「オペラ座の怪人」「キャッツ」「レ・ミゼラブル」をすべてプロデュースした英米演劇界の重鎮。
その他、「ミス・サイゴン」「メリー・ポピンズ」など数えきれないほどのヒット作を手掛け、1996年には英国演劇界への貢献により、ナイトの爵位を授与されている。

僕は、8歳のときにプロデューサーになると決めた。あるミュージカルを観て、絶対にこういうものを作りたいとね。若い時から自分が何をしたらいいのかハッキリと分かっていたけど、そういう人は意外に少ないと思う。

僕は目標があったので、最初は劇場の清掃係から始めて、裏方をやって、演出をやって、と劇場で出来る仕事は何でもした。いろいろな仕事を経験したことが、プロデューサー業に役に立った。彼らのやっていることが分かるから、すべての人たちとすぐに話ができるんだ。

最初に会社を作ったときはとにかくおカネを集めた。人生にはギャンブルは必要だ。大きすぎるギャンブルは身を滅ぼしてしまうから、そこは気を付けないといけないが。それでも人生には、リスクを負うことだって大切だ。

19歳のときに初めてショーを制作したんだが、お金がなくて非常に大変だった。23歳のときには4万5000ポンドくらい、僕にとってはかなりの負債を抱えてしまったこともある。おカネがないから、誰にも支払いができない。そこで銀行に行ったら、そこのマネジャーが、君には才能があると思うから500ポンドを貸してあげるとサポートをしてくれた。俳優たちの賃金さえ払えば、組合から締め出されないで済む。そういう綱渡りの生活を続けてきた。

いろんな赤字を完全に払い終えたのは「キャッツ」が成功してからだ。借金を返し終わったとき、銀行のマネジャーが「君は隠れないで、必死になって返した」と言ってくれた。返せないときも「後で絶対に返すから信用してくれ」と変な小細工をせずに、ハッキリと正直に言えば人は信じてくれることを知った。僕はそれを今でも守っている。

とにかく僕はそのころ、いいものを作りたいというだけで、お金儲けをしたいという気持ちはなかった。ショーを成功させたい、ただそれだけだった。若い人はアイデアさえあれば何とかなると思っているみたいだが、アイデアだけではうまくいかない。とにかく、これだと思った直感を信じること。信念を持てるかどうかが大事。自分の信じたことを貫き通して、最高のものを作っていく。そのための努力を惜しまないことだね。

(撮影:梅谷秀司)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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