再び「日本株バブル」は起きるか 日経平均1万円台定着の条件(3)

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だが、株式に対する偏った先入観を取り除くには、長期投資家の参入を促す工夫も必要だろう。上場企業が長期保有の株主になんらかの還元策を講じた際には、その費用を損金算入できるような仕組みを導入するのはどうだろうか。

多くの企業にとって、個人投資家対策は悩みの種だ。投資家向け広報(IR)担当者は「株価が値上がりしたらすぐに利益確定売りで処分してしまう」とぼやく。さまざまな相場観を持つ投資主体の市場参加は、価格発見機能の円滑化にもつながるはずだ。

証券アナリストの白石茂治氏は「米国で1980~90年代に実施されたさまざまな市場振興策を日本も見習うべき」と説く。

米国市場は65年から17年にわたって停滞。米経済誌「ビジネスウィーク」はこれを「株式の死」と報じた。長期間に及んだ低迷脱出のきっかけになった一因が、キャピタルゲイン減税や企業の株式分割積極化など官民挙げての取り組みが活発化したことだったという。「80年代に個人株主は一気に約2000万人増加した」(白石氏)。

世界に目を転じれば、リーマンショックや欧州債務危機などを機に、「アングロサクソン型資本主義」を見直そうとの流れが強まっているように見える。

欧州で導入機運の高まる「金融取引税」などはその一環だろう。そうした中で、株式市場の活性化をどう位置付けるのか。相場急騰で一般の関心が高まりつつある今こそ、議論を深める好機だ。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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