『レ・ミゼラブル』(Les Misérables) ―経済も人生も、あゝ無情―

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この作品では、ナポレオン1世没落直後の1815年から復古王政時代経た1833年までの18年間が対象で、まさにフランス史そのものといっても過言ではない。

この作品の場面となった時代は、まさに先が見えない革命の時代であった。しかし、現代でも先が見えないということでは、経済でも経営でも一緒である。経済政策や経営計画では、一般的には中期計画(3年)、そして長期計画(5年)がある。しかし、せっかく計画を立てたとしてもなかなかそれが達成できない。それは計画には無理がつきものであるが、予想できないことが起こることからである。東日本大震災や同時多発テロなどの天災や、尖閣諸島問題やアラブの春などの政治的問題、欧州債務危機や財政の崖などの経済的問題、シェールガスの活用などの産業的課題などなど、予想もしなかった問題も発生する。それも悲惨なことも多い。もちろん、個人の人生でも予想できないことが多い。

しかし、将来が全て分かっていたら、計画も努力もする気がしなくなるのではないか。分からないから、いろいろあるから、大変だけれども面白いのではないか。味があるのではないか。また、予想外の事態や、失敗から大成功が生まれることも多い。どんな時でも“前向きな気持ち”を持ち続けることが最も大事ではないか。他力本願的な経済政策や経営計画では成功は覚束ない。バルジャンも強い清らかな気持ちは最後まで失わなかった。

というわけで、突然ですが、この『宿輪純一のシネマ経済学~映画を見れば経済がわかる』の連載もこれで終了です。約3年間お世話になりました。

宿輪 純一 帝京大学経済学部教授・博士(経済学)

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しゅくわ じゅんいち / Junichi Shukuwa

帝京大学経済学部教授・博士(経済学)。1963年生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒。富士銀行、三和銀行、三菱東京UFJ銀行を経て、2015年より現職。2003年から兼務で東大大学院、早大、慶大等で非常勤講師。財務省・金融庁・経産省・外務省、全銀協等の委員会参加。主な著書に『通貨経済学入門(第2版)』『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞出版社)、『決済インフラ入門〔2020年版〕』(東洋経済新報社)、『円安vs.円高(新版)』『決済システムのすべて(第3版)』『証券決済システムのすべて(第2版)』『金融が支える日本経済』(共著:東洋経済新報社)などがある。

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