東電は発電部門を切り離し送電特化で再生を 論争!発送電分離

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東電は今でも日本最大の電力会社であり、東電をどうするかはシステム改革委で議論してもいいぐらいだ。東電処理と国全体のシステム改革はほとんど一対の話といえる。しかし政府としては、東電は1企業であるし、原子力損害賠償支援機構との絡みもあるので、別問題として考えるべきということなのだろう。

政府は発送電分離として法的分離を志向しているように見える。その傍証として、政府の管理下にある東電は社内カンパニー制を採ろうとしている。広域のISOを強力な機関として一緒につくるのであれば、まずは法的分離でもいいだろう。

東電は送電事業特化、旧国鉄清算を参考に再生の仕組みを

東電は先日、福島の事故対応費用が当初想定の5兆円を大きく超え、10兆円を上回る可能性もあるとして、政府に新たな支援を求めた。これは、発送電分離を含む改革を受け入れるというシグナルともいえる。つまり、原発を含む東電のビジネスモデルの抜本改革が必要であり、その手段として発送電分離は止むを得ないということ。

その場合、選択肢として発電部門の切り離し(売却)が考えられる。東電の発電部門は今、厳しい状況にある。原発再稼働の展望が持てず、老朽火力発電所も多い。資金もない。であれば、発電ビジネスから手を引いて、送電ビジネスに特化したほうがいいのではないか。ただその場合、支援機構による支援の仕組みも変わってくるので、1企業だけでは判断できない。50%強の議決権を持つ政府(支援機構)が国策として考えていくしかない。

旧国鉄を清算する際にも、借金部分を切り離したうえで、残りの旧国鉄を地域分割して、民間企業として経営を立て直し、少しずつ借金を返していくという仕組みを作った。同様に、東電を一定のくびきから外し、その代わり発送電分離をする。世のため人のためになるような所有権分離の先駆けになってもらう。原発は国が管理下に置く一方、東電は送電ビジネスに特化して利益を上げ、少しずつ賠償、除染費用を返してもらう、といった仕組みが考えられる。

東電は日本全体の発電量の3分の1を占めており、東電の管内で発送電分離がうまくいって効果が実証されれば、他の地域でも同じ仕組みに変えていくのが望ましいという世論になるだろう。その意味でも東電は先行モデルとして適しており、それが東電自身の再生を早めることにもつながるので、頑張って欲しい。

たかはし・ひろし●1993年東京大学法学部卒、ソニー入社。2000年、内閣官房IT担当室主幹。07年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(学術博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教を経て、09年より現職。経済産業省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員。同電力システム改革専門委員会委員。

(撮影:梅谷 秀司)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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