老朽原発の運転延長審査が最優先された理由 関西電力・高浜1、2号機が40年超の稼働へ

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田中俊一・原子力規制委員会委員長

それにしても、なぜかくも関電の原発を優先したのか。

現行ルールのうえでは高浜の2基については今年7月7日までに運転延長の認可を出せなければ、時間切れアウトになり、廃炉に追い込まれるためだ。

そうした事態を避けたかったのは、関電のみならず規制委も同じだった。万が一、時間切れになった場合、政府与党や電力業界からの規制委への風当たりは激烈なものになるうえ、関電から損害賠償請求訴訟を起こされるリスクも取り沙汰されていた。

急ごしらえの対応、合格後に試験も

そうした中で、審査は紆余曲折を繰り返した。プラント部分の審査を指揮した更田委員長代理自身が八木社長との面談で「耐震設計の部分についてはなかなかすんなりいかなかったように思う」「急ごしらえで(関電が)いろんな手法(を編み出してきた)というところもあったのだろうと思う」と語ったように、蒸気発生器など重要機器の耐震評価の前提となる「減衰定数」(揺れが収まるスピード)が関電の都合で、緩和されるいきさつもあった。

審査に際して、「規制委は関電に配慮しているのではないか」と疑われる一幕もあった。

減衰定数を関電が従来の1%から3%に緩和したことに伴い、蒸気発生器を実際に揺らす試験(加振試験)が必要になったが、審査の終盤になって「工事計画認可を出した後の、使用前検査段階で確認できればいい」という進め方が決まったためだ。

当初のやりとりでは、加振試験については工事計画認可を出す前のタイミングで行うという考えを規制委は示していた。しかし、工事計画認可は遅くとも7月7日までに出さなければ時間切れアウトになる。最終的に、再稼働直前の使用前検査で確認すればよいということになったことで、関電は耐震工事終了後の3年後まで時間的猶予を得た。要は40年超え運転の合格証をもらった後に、試験をやって通ればいいということになったのである。こうしたいきさつがあったことから、設置変更許可に際してのパブリックコメント(意見募集)では「これでは後出しじゃんけんで何でも通ってしまう」との批判も出た。

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