草食投資隊「英国EU離脱問題」を語り尽くそう 結論「離脱で得るプラス効果はほとんどない」

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中野:イギリスでEUからの離脱を声高に叫んでいるのは、いわゆるエスタブリッシュメントに属する人ではなく、地元の漁師など普通の生活を営んでいた人たちですからね。米国でトランプ候補を支持しているのも、どちらといえば所得の低い白人です。似たような構図ですね。ただ、問題はイギリスのEU離脱が、6月23日の国民投票で現実化した時ですよ。どうなるのでしょうか。

渋澤:いや~、どうなっちゃうのでしょうね。元ヘッジファンドに勤めていた自分の感覚では、とりあえずイギリス株も英ポンドも、ユーロも売りが先行していると思います。だから、結果がどうであれ、最初のリアクションは材料出尽くしで売りのカバーが入って、逆にポンドやユーロが上昇するかもしれません。ただ、ブレグジットが現実化したとしても、その影響が経済指標などの数字に表れるのはまだ先のことです。少なくとも翌日は何も変わらない。だから、ポンド安、ユーロ安の傾向がすぐに反転することはないでしょうね。

中野:でも、ブレグジットでイギリスの株価が暴落するのはわかりますよ。なぜ、日本株の下落率がいちばん大きいのでしょうね。輸出が影響を受けるといっても、これってなんかおかしいと思いませんか。

小型株の下げがきつい日本株

渋澤:日本株の下落はブレグジットの影響というよりも、日本固有の問題ではないでしょうか。安倍首相がサミットで、リーマンショックを引き合いに出して、世界経済のクライシスに対する懸念を表明して、その後、消費税上げを延期しました。恐らく外国人から見れば、あのコメントを聞いて、「ああ、アベノミクスはタオルを投げたんだね」と思ったでしょうね。

中野:まあ、でも6月に入ってからの日本株の急落は、為替との関係で考えれば順当なところかもしれませんけれどもね。1円円高が進めば、日経平均株価は200円程度下げますから。現状、イギリスの国民投票が終わらないと、日銀にしてもFRB(米国連邦準備制度理事会)にしても、何も手を打てないのは事実です。

藤野:その分、売り方としては仕掛けやすい環境ではあります。特に、日本株については小型株の下げがきついですね。東証マザーズ指数を見ても、今年に入ってから27%も上昇したのに、6月16日のように1日で7%も下げることがある。これだけマーケットが荒れると、市場関係者の多くが期待していたLINE上場による市場活性化というのも、どこかに隠れてしまいました。こういう時は、下がったからといって、むやみやたらと買いに行かないことが得策でしょうね。ナンピンするのも、まだ早い気がします。とりあえずはキャッシュポジションを高めて様子を見るというところでしょうか。

渋澤:いくら金融を緩和してもマーケットが下げるのは、やはり金融緩和のメリットを享受できていない人が大勢いて、その人たちの不信感がイギリスのEU離脱問題や、トランプ現象に現れていると見るのが妥当なところでしょうね。もし、ブレグジットの問題が片付いたとしても、次は米大統領選挙が控えています。トランプ旋風で、またマーケットが一波乱ということも考えられます。

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