化粧品デフレに挑む、“美しすぎる”リーダー ポーラの高級化粧品は、なぜ売れるのか

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「お仕事をするうえで、大変なことは」――。定番の質問に対しては、「あんまり、ありません」と予期せぬ答えが返ってきた。あまり、くよくよ悩んだりするたちではないのだろうか。

「これと決めたら後は早いのかもかもしれません。学生時代には取捨選択の機会がなかったですが、社会に出たら、やりたいことを全部は追えなくなって。転職も重ねて、だんだん判断スピードが上がりました」

忙しいほうが余計なことを考えなくていいですよね、と語る彼女だが、10時の出社、19時の退社という生活ペースは崩さない。休日出勤もほとんどしない。インタビューに同席していた元商品開発部員も「19時退社なんてできるの!」と驚愕した。

かつては連日、深夜までパソコンとにらめっこをする女性社員も珍しくなかった開発チーム。砂金氏は「情報の電子化が進んで、前ほど時間がかからなくなっただけですよ」とケロリとしているが、実はその裏に、「デスクにいたってしょうがない」という強い思いがある。

長時間デスクにいるより、ピカソを見よう

「iPhoneひとつ持っていれば、資料だって何だって外で見られる。だからつねに動き回って、いろんなものを見ながらアイデアを考えたほうが効率的ですよね」

チームで連れだって“市場調査”に出掛けることもしばしば。美意識を磨くために美術館に出掛け、「うーん、ピカソはよくわからないな」などと、他愛のない議論を交わす。

これがひいては、ブランド自体のイメージやパッケージのデザインを議論する際の材料になっていくという。「考えをストレートに言い表そうとすると、沈黙が増えてしまうけど、例え話で進めていくと意外とうまくいく。

『あのとき、あの美術館で見た、あれ風に考えるとさ……』みたいな感じです。皆で体験を共有するのは、そういう意味でものすごく大事」。

「B.AのライバルはB.A。過去のB.Aに勝つ仕事をしていこうとつねに言いながら、スタッフみんなで突き進んでいます」。

チームリーダーとしてのキャリアは、まだまだ歩み始めたばかり。それでも、次の世代を育成するという砂金氏の新たなミッションは、すでに実を結び始めているようだ。

(撮影:梅谷 秀司)

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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