求人情報と違う労働条件が横行し続ける理由 根本的な問題はあまり変わらない

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「話が違う」と思っても立場の弱い労働者はなかなか抗しきれません(写真:polkadot / PIXTA)

「えっ! 求人広告と違うじゃないですか?」

「ああいうふうに書かないと人が来ないからさ」

初回から平均視聴率20%超えが続いているNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」。失業した主人公・小橋常子(高畑充希)が職探しに奔走する中、ある会社を訪ねたときの1コマだ。常子は新聞の求人広告に記載されていたよりもはるかに低い給料を提示され、結局、その会社への就職はかなわなかった。

時代設定は昭和15年ごろ。「今から70年近く前だから、そんなこともあったのかな」「しょせんフィクションだろう」と思う人もいるだろうが、現実に今の日本においても同じような話は山ほど転がっている。ハローワーク(公共職業安定所)や求人情報誌、就職・転職サイトなどに記載されている求人の情報と、実際の労働条件が異なる労働契約を結ばされる、いわゆる「求人詐欺」だ。

職業安定法に「懲役刑を含む罰則を加える改正」の検討

厚生労働省は、ハローワークや大学を含む民間の職業紹介事業者に賃金などの労働条件を偽った求人を出した企業を対象に、職業安定法に懲役刑を含む罰則を加える改正の検討を進めている。6月6日には同省の有識者検討会が規制強化を盛り込んだ「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」の報告書をまとめた。今後、労働政策審議会で議論を本格化させる。

求人詐欺にはさまざまなパターンがある。たとえば求人票では「正社員募集」と記載されていたのに実際に就職してみると「契約社員」だったり、求人票では「基本給●●円」と記載されていたのに実際は基本給には残業代が含まれているなどと説明され残業代が支払われないケースが現実に生じている。

ただ、求人票は、あくまで会社が求人のために労働条件を記載する媒体であり、労働契約の内容そのものではない。求人募集を受けて面接などの採用選考を経た結果、労働者と企業側で合意したうえで結んだ労働契約が、実際の労働条件となる。

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