なぜ女子大生はコラムニストを目指すのか 無謀な夢?心に潜む就活への対策と嫌悪感

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亜香里さんはその後、コラムニストを目指しながらも就職活動を再開。その中で見つけた、ある編集プロダクションで働きはじめました。

亜香里さん:中堅の出版社から内定をもらっていたのですが、より現場で文章を書く力がつきそうで、卒業前からアルバイトとして働ける編集プロダクションを選びました。まだ覚えることばかりでブログやインスタの更新もできないくらいですが、ここで経験を積めばコラムニストへの道も近づくと思っているので、全然つらいとは思いません!

一方の祐奈さんは、マイペースにコラムニストへの夢を持ち続けているようです。

祐奈さん:お話を聞いたあと、サークルの友人たちと一緒に面白いコラムの研究をするようになったんですよ! 切り口の作り方とか、文章のつなぎ方やオチのつけ方とか、フレーズのバリエーションとかをみんなで分析する感じで。「プロはこんなにもすごいのか」と勉強になることばかりなので、マネすることからはじめて、「在学中に“女子大生コラムニスト”としてデビューしたいな」って。

あこがれを抱く理由

なぜ女子大生たちはコラムニストにあこがれを抱くのでしょうか?

もちろん、「自分の文章でお金を稼ぎたい」という自己実現への欲求はあるでしょうが、それだけではない気がします。たとえば、帰り際に亜香里さんがボソッと言った、「文章がうまくなっておけば就活に生かせるし、入社してどの部署に配属されても使えますよね」という気持ちも大きいのではないでしょうか。

また、祐奈さんは、「就活に嫌なイメージがあるので、今から手に職をつけるつもりで文章の勉強をしておきたい」と言っていました。就職活動への疲れやイメージの悪さが、文章を書くことに慣れた彼女たちにコラムニストへの夢を描かせているところもあるのでしょう。

ちなみに、「コラムニストになりたい」という男子大生からの問い合わせはほとんどありません。「文章を書くのが好き」という人でも、女子大生のように夢を描かず、出版社への就職などの堅実な道を選ぶところが、いかにも今どきの男子大生なのかもしれません。

正直なところ、20代前半の女性がコラムニストの収入だけで生計を立てるのは難しいでしょう。しかし、「ゆとり」「さとり」と揶揄されがちな彼女たちが、私たちの想像を超える夢を抱き、能力や可能性を秘めています。

企業側としては、彼女たちの能力や可能性に気づいて採用し、伸ばすことができるか? 入社後にコラムニスト以外の夢も見せてあげられるか? 採用担当者の眼力と、管理職の指導力が問われています。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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