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海外事業における最大の強みは
DNAを受け継ぐローカル社員の存在 張本邦雄 TOTO株式会社 代表取締役社長執行役員

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海外展開は10年、20年のスパンで考える

松下 TOTOは海外市場で主にどの層をターゲットとされていますか。

張本 アッパーゾーンですね。そこで勝負しないと利益が出ません。だから海外に進出する際には公共ゾーンをまずねらいます。特に重要なのが空港。衛生陶器は実際に使っていただくことで、品質や機能の明らかな差を実感していただけるのです。アッパーゾーンにそのことを認めてもらうためには、空港のトイレは絶好の場です。欧州の空港ではTOTOが入っていないところもあるので、まだまだ開拓の余地はあるなと思います。

そしてある一定の事業規模まで成長した国、たとえば米国ではアッパーミドル以上もターゲットに入れています。その先の、ミドルの層を本格的にターゲットに入れるのかどうかは、次の時代の判断になるでしょう。ミドル層の市場は、ローカルのメーカーと外国メーカーとのせめぎ合いになるので、厳しい戦いが予想されます。過去何社か失敗しているメーカーもあり、今のところミドル層に入る決断はしていません。

松下 次の経営者が考える課題ということですね。

張本 われわれは常に長期スパンで考えて行動しています。米国への進出も中国への進出も、私の3代くらい前の社長が決断しているのですが、利益が出るまでに約20年かかっています。20年間赤字を出し続ける事業を許容する企業は、今はなかなかないでしょう。インドでも再来年(2014年)に工場が操業開始予定ですが、去年インドを訪れたときに私は「この工場が利益を出すようになるのは僕の次かその次の社長のときだろう」と言いました。10年、15年のスパンで考える事業だということを明確にしておかないと、経営判断を誤るからです。

松下 インドを含め新興国にも進出されているわけですが、成長も著しいが変化も激しい新興国ならではのリスクもあると思います。

張本 欧州の金融危機以降、ベトナムでの業績が劇的に落ちました。欧州の金利が低下し、それを受けてベトナムが金利を下げた結果、景気が悪化し、売り上げが半分になったのです。経済が未成熟な国ではこうした劇的な変化が起きやすいですね。日本ならプラスマイナス10%の変化が新興国では30%の変化になってしまう。この点はインドも中国も同じで、いずれも業績が落ちました。今年、ベトナムと中国に行ったのですが、そこで強調したのは「絶対焦るな」ということ。「長いスパンで見れば人口は増え、所得も増えていくので、じたばたすることはない。今大事なのは、どうやってブランドを維持し、代理店をどうサポートしていくかであって売り上げではない」と。

あえて「売り上げではない」とメッセージを発信したのは、新興国の会社は、これまで右肩上がりしか知らないので、景気が悪くなったり、劇的に売り上げが落ちたときに適切な対処が取れないことがあるからです。たとえば、業績が落ちているにもかかわらず日本のわれわれに対しては「大したことないです」「すぐ業績は戻ります」といった報告をしがちです。現地の経営陣は社員にも同じことを言っているはずで、これはよくない。私が現地の経営陣に繰り返し言っているのは「真の実力の数字だけくれればいい。そうしないと経営判断を誤る。絶対に無理するな」ということです。

実際、彼らの報告を受けて、2012年の下期の売り上げ目標では、数値を下げた国もあります。現地化を標榜するなら、売り上げ目標も現地の事情にあわせるべきで、ここで「大変なのはわかったが、がんばってくれ」と言っていては私の言葉に誰も耳を傾けなくなるでしょう。ですから数値目標を劇的に変えました。その結果、彼らにもやる気が見えてきました。

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