民間も社会的責任持ち生活者支援に取り組め ヤマトホールディングス 木川 眞社長に聞く

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宅急便をはじめ多様な物流改革を実践し、日本市場を刺激してきたヤマトホールディングス(HD)。成熟化社会を迎えた日本に必要な再生・成長のカギは何なのだろうか。

木川 眞(きがわ・まこと)
ヤマトホールディングス社長
1973年富士銀行(現みずほ銀行)入行。2004年みずほコーポレート銀行常務取締役。05年ヤマトホールディングス入社。06年代表取締役兼常務執行役員、07年ヤマト運輸社長、11年4月より現職。

──政府の堅牢な規制に単独で風穴をあけてきたヤマトHDから見て、今の日本に必要な方策とは。

われわれは宅急便を生み出し、これまで進化させてきた。その成長の歴史の中で規制と闘い、需要を創造してきたのは確かだ。しかし、今は日本経済全体が成熟し、一企業や一産業だけが成長を享受できる時代ではない。これからは「協調・共生」をキーワードに、世界で成長する道を探っていくことが不可欠だ。

マイケル・ポーター教授(米ハーバード大学)が提唱するCSV(共通価値創造)の発想が重要。社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチを追求していかねばならない。

官と民の結集が不可欠

──「協調・共生」をテーマにして、日本の閉塞状況をどのように乗り切っていきますか。

前提として、これからは、官と民の結集が必要だ。官だけでやれる領域はあるが、民に任せたほうがいい領域をきちんと峻別すべきだ。少子高齢化社会を迎え、国民経済的に見ると逆スパイラルになっている状況を、正のスパイラルに転換することが日本再生の第一歩になる。

住民サービスにしても、生活弱者への取り組みを、公共(行政)サービスだけに任せていては限界がある。民間企業も、新しい社会的責任の考え方を持ち一緒に加わっていかないと、住民サービスの維持は今後難しいだろう。日本は課題先進国といわれるが、課題だけを持ち続けて解決策が生み出せなければ、課題後進国になってしまう。

当社には全国に約4000拠点、約18万人のセールスドライバーと従業員、そして情報ネットワークがある。この経営資源をプラットホームとして開放する。そこに行政や企業、住民、NPOなどが参加していけば、地域活性化や生涯生活支援の取り組みに必ず役立つはずだ。

われわれは物流運輸業として、一次産業、二次産業、三次産業それぞれとつながり、日本の国益に見合う新しいビジネスモデルを構築したい。

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