天守閣は物置だった?「日本の城」の教養10選 世界遺産「姫路城」のスゴさもわかる!

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Q9. 熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城が心配です。修復できますか?

今年4月の熊本地震では、熊本城も大きな被害を受けました。加藤清正の手による「難攻不落」といわれた堅牢な石垣や築城以来の櫓の多くが崩落してしまいました。

実は熊本城では、1998年から文化庁が中心となり、城内の本格的な復元整備計画が進められている最中でした。2008年には城の中心だった本丸御殿大広間も完成し、数々の櫓も往時をしのばせる姿に戻りつつある状態でした。

今回の地震では、20年近くかけて復元してきた建物も被害を受け、ここまで尽力してきた関係者の気持ちを思うと涙を禁じ得ません。

しかし、先人から受け継いだ文化財を残し、歴史を後世に伝えていくためには、こうした試練も乗り越えることが必要でしょう。修復には十年単位の期間と多額の費用がかかるとのことですが、応援し続けたいと思います。

江戸城に「天守閣」が再建される?

Q10. 徳川将軍の「江戸城を再建しよう」という話もあるんですか?

最近、新たな東京のシンボルとして、「江戸城復活」の機運がひそかに高まっています。NPO「江戸城天守を再建する会」では、現存する天守閣の土台を活用し、「当時そのままの場所と姿形で江戸城天守を復活させよう」という運動を展開。注目されています。

ただし、再建にかかる費用は、概算でなんと「350億円」とも言われています。解決しなければいけない課題も多く、まだ夢物語の段階ですが、もし実現すれば、明暦の大火で焼失して以来360年ぶりの勇姿が見られることになります。

織田信長に始まった天下統一への試みは、豊臣秀吉を経て徳川家康により成し遂げられました。江戸時代という「泰平の世の始まり」は、「城の時代の終焉」でもありました。

乱世は多くの破壊をもたらしましたが、一方で築城にともなう土木建築技術の著しい発展をもたらし、ノウハウは「江戸の町全体のインフラ整備」にも発揮され、世界に類を見ない大都市へと変貌を遂げる基礎となりました。江戸時代は「戦国時代という下地」があったからこそ成立できたのです。

今回紹介したように、観光地として人気の「お城」や「城跡」、あるいは前回紹介した「空前のブームになっている日本刀」も、「日本史を知ったあとに見る」と、また「違った見え方」がするものです。

「これがあの殿様のお城か!」「ここであの合戦があったんだな」など、たんに「美しい」「カッコいい」「スゴい」だけでは終わらない、もう一歩踏み込んだ「大人の楽しみ方」ができます。

日本史を学生時代に学ばなかった人も、いまからでも遅くありません。「日本史にまつわる素材」は、生活のいたるところにあふれています。ぜひ、お城に足を運んでみることで、「日本史を学び直すきっかけづくり」にしてみてください。

山岸 良二 歴史家・昭和女子大学講師・東邦大学付属東邦中高等学校非常勤講師

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やまぎし りょうじ / Ryoji Yamagishi

昭和女子大学講師、東邦大学付属東邦中高等学校非常勤講師、習志野市文化財審議会会長。1951年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。専門は日本考古学。日本考古学協会全国理事を長年、務める。NHKラジオ「教養日本史・原始編」、NHKテレビ「週刊ブックレビュー」、日本テレビ「世界一受けたい授業」出演や全国での講演等で考古学の啓蒙に努め、近年は地元習志野市に縁の「日本騎兵の父・秋山好古大将」関係の講演も多い。『新版 入門者のための考古学教室』『日本考古学の現在』(共に、同成社)、『日曜日の考古学』(東京堂出版)、『古代史の謎はどこまで解けたのか』(PHP新書)など多数の著書がある。

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