海に目を向ければ、日本は資源大国だ 『オーシャン・メタル』を書いた谷口正次氏に聞く

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──鉱物資源に限れば海底資源が焦点であり、その事業化において日本は韓国にも大きく水をあけられているとあります。

韓国は、2012年5月に公表された、日本の「緊急経済対策」に相当する施策で、海洋開発産業にかかわる政府目標を打ち出している。海洋プラント受注を11年の257億ドルから20年までに年間800億トンに増やし、同時に関連するエンジニアリングや資機材などの国内受注比率を11年の40%から20年までに60%に向上させるというもの。もともと造船業の総合海洋エンジニアリング産業への転換を急いでおり、たとえば09年にはすでにサムスン重工業がロイヤル・ダッチ・シェルから15年間の契約で、天然ガスを船上設備で液化するシステムを備えたFLNG(洋上液化・貯蔵・出荷設備)を1隻50億トンで10隻分受注している。

──海底鉱物資源の開発でも取り組みが活発とか。

たとえばフランスの海洋エンジニアリング会社のテクニップと共同で開発を進めている。対象はパプアニューギニア沖での海底の金、銀、銅の採掘。テクニップは海底から鉱石を海上に引き揚げる揚鉱管の技術で優れる。船自体はドイツ製だが、テクニップを通じて海底資源開発の技術レベルを上げようと必死だ。

──パプアニューギニア沖は開発先端地域のようですね。

多国籍の関連企業が複数社群がってパプアニューギニアの領海、水深1600メートルの海底で事業化を進め、トップランナーは14年に年間180万トンの鉱石を採掘する計画だ。うち110万トンは中国向け。パプアニューギニア政府との最終契約がまだ残っているが、すでに主要な船、機械類の発注は済んでいる。10年近く探査を続けてきて、極めて品位の高い鉱石を確認している。たとえば銅の含有率はなんと7・2%、金もトン当たり5グラムと極めて高い。金属ベースの推定埋蔵量は154万トンに達し、商業化の段階に入った。

──日本船籍の探査船の動きでは「ちきゅう」や「白嶺」という名をよく聞きます。

「ちきゅう」は地球深部探査船で、主に地震や地球の成り立ちといったサイエンスの部門で活躍しているが、海底資源の探査にも加わる。11年に沖縄トラフのボーリング調査において5000万トンに相当する「海底熱水鉱床」に金、銀、銅の存在が確認された。「白嶺」の場合はまさに資源探査船で、海底観察、音響調査、物理探査、ボーリングによるサンプリングなどの作業をしている。このほかチャーター船を買い取った「資源」もある。

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