トヨタ「クラウン」の憂鬱 大胆チェンジに踏み切った3つの理由

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デザインだけでなく、エンジン、トランスミッションも一新した。今回は、後輪駆動大型車向けに専用開発した排気量2.5リットル直列4気筒ハイブリッドエンジンを搭載。ハイブリッドエンジンをプレミアとしての位置づけではなく、ガソリンエンジン搭載車と並んで通常のラインナップの中に位置づけた。新型ハイブリッドエンジンは従来のガソリン3リットルV型6気筒エンジン並みの走行性能と静粛性を実現しながら、燃費の向上と、コストダウンを実現した。

新型「クラウン」のロイヤルバージョン

従来、大型クラスのハイブリッドエンジンは燃費など経済性向上よりも、走行性能の向上に重きを置いたいわば贅沢品という位置づけだった。しかし今回のハイブリッドエンジンは、中大型車に求められる走行性能を維持しながらも、経済性向上を実現したエンジンとなっており、今後、同クラスのさまざまな車種に展開され、トヨタのハイブリッド戦略の中軸を担うことになりそうだ。

クラウンの既存顧客層は50~60歳代の男性が中心で、新型クラウンも基本的には同様の傾向となるだろう。ただ、これまでの先行受注分1万台強のうち、6割が「アスリート」シリーズで、またエンジンタイプではハイブリッドが6割を占めるなど、こてこての保守系クラウン支持層の好みとはやや違ったような販売傾向も示している。

ピンクで女性ウケを狙う?

「高級車」ゆえに何でも付いている代わりに価格も高く、販売の“入り口”で顧客を絞り込みすぎていたという反省から、安全装備などを省いて価格を350万円台に設定したベースグレードも設定し、呼び水効果を狙う。CM製作をきっかけにピンク色のクラウンの発売も決め、「女性も堂々とかっこよく乗れる色も整ってきた」と豊田社長は自信を込める。

ピンクのクラウンが女性にウケるかどうかは不明だが、かつて「ゼロ クラウン」で見せた挽回をなぞろうとする14代目。長く続くブランドには固定ファンもいるため、守りも必要だが、あえて「攻め」に出た大胆なデザイン変更は、「クラウン」というビッグネームですら、簡単には通用しにくくなったトヨタの憂鬱を象徴しているようである。

(撮影:鈴木 紳平)

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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