異色ベンチャーに学生4万人が殺到する理由 型破りのインターンシップで、学生の心わしづかみ

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インターンシップでは、ワークスのマネジャークラスの社員を30人ほど配置しているが、彼らの役割は“教える”ことではない。社員は、成果物に対して「なぜ、そのように考えたのか」「他の選択肢はどんなものを想定し、その中でなぜこの解を選択したのか」といった質問形式のレビューを行う。

それによって、学生の考えを広げたり深めるための、刺激を与え続けるのが役割だ。学生は、そういった刺激を受けながら、考えて考えて、もうダメだと思ったその先のもう一歩を絞り出していくのだ。

このように、答えのない課題に対して、ひたすら考えて、自分の解を導き出すという経験は、大学のカリキュラムではなかなか得られないものだろう。おそらくこの経験こそが、学生にとっては非常に刺激的なプログラムとなっているはずだ。

現状に不満があれば、社員自ら制度を作る

――ワークスは「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan調査)の常連企業です。10年が1位、11年と12年は2位でした。なぜこのように高く評価されているのでしょうか?

ワークスでは、社員の一人ひとりが最大限に能力を発揮できる環境の整備に取り組み、現状に満足していないものは社員自らが創り出す文化がある。

たとえば出産育児支援制度「ワークスミルククラブ」は、有志の社員が集まって「自分だったらどういう制度があれば、仕事と出産と育児を両立できるか」という観点でアイデアを出し合い、制度として確立させたものだ。

内容は、妊娠判明時から子供が3歳になるまで取得できる育児休業、子供が小学校を卒業するまで選択できる短時間勤務、休業中も社内の情報にアクセスできる環境の整備、職場復帰時に年収の15%をボーナス支給するといった充実した制度だ。

岡本 直典 ワークスアプリケーションズ リクルーティンググループ グループリーダー
新卒で大手自動車メーカーに入社、その後貿易会社での営業経験を経て1998年に創業3年目のワークスアプリケーションズに入社。わずか7年で営業部門の統括に任命される。その後3年間連続増収を果たした実績を買われ、新しい事業部の立ち上げを手掛ける。 その後同社で最も重要といわれるセクションである、採用部門の責任者へ抜擢される

ユニークな制度としては「カムバック・パス」というものがある。これは一定の成績を収めた後にさまざまな事情で退職した社員が受けられる特典であり、3年以内なら同条件・同ポジションで復職することが可能となっている。

その他、会社のビジョンや価値観を社員全員が共有するために、ワークスでは毎月1回、全社員が集まり、経営陣が直接会社の戦略、方向性を説明する全社会議を実施しており、新しい会計年度に入る毎年7月には、全社会議後にキックオフパーティーを開催している。

最も大規模なのはクリスマスパーティーだ。社員だけでなく、家族や婚約者もドレスアップして参加するので約5000名近くになり、パーティー会場は華やかだ。

会場は都内でこの規模のパーティーが唯一可能な帝国ホテル。地方に住む参加家族には、2人までの交通費も会社が負担しており、社員の子供にはクリスマスプレゼントも用意している。日頃、社員をサポートしてくれる家族やパートナーの皆さんに楽しんでいただきながら、会社への理解も深めていただけるので社員にも好評だ。

インターンシップという採用手段を使ってエントリーマネジメントを強化し、アカウンタビリティを発揮できる施策を積み重ねることで、「働きがいのある会社」での高評価につながっているのだと考えている。

(撮影:尾形文繁)

 

佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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