紙の新聞は終わる?――米国では大リストラ ニューヨーク・タイムズの苦境(上)

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拙著出版・新聞 絶望未来(東洋経済新報社)でも書いたが、新聞の存続は、デジタル版の課金モデルが成功するかどうかにかかっている。紙がいずれなくなる、なくならずとも縮小するのは確実だから、これは緊急課題といっていい。

課金モデルとは、自社サイト(デジタル版)に「ペイウォール」(pay wall:課金の壁)を築くことを指す。自社のサイトのユーザーに、サイトの全体、もしくは一部分に登録者専用などの「壁」を設け、その先は非登録者に閲覧を認めない仕組みをつくる。そうして、ユーザーから購読料を徴収することで、プリント版の販売・広告の落ち込みを補う。さらに、デジタル版のみで収益を確立することを目標にしている。

ただし、ペイウォールを導入すると、無料のときにいた読者が一斉に立ち去るこという懸念があり、なかなか踏み切れない新聞が多かった。10年の時点でのNYT紙も、そうした新聞の一つだった。

ライバル2紙の成功に追随

ところが、ペイウォールを導入しても、大きな読者離れは起きず、逆に有料ユーザーを増やしている新聞があった。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)と、米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)である。

この2紙の好調を見て、11年3月、ついにNYT紙のサイトも課金モデルへの移行に踏み切った。現在、日本でも日本経済新聞や朝日新聞が課金モデルに移行しているが、これはNYT紙と同じように、プリント版に対して危機感を持ったからだ。

NYT紙の苦境は、08年のリーマンショックが大きな引き金となって始まった。それまで100万部以上あった紙の発行部数は、リーマンショック以後大幅に落ち込み、09年には100万部割れを起こしていた(ちなみに部数のピークは1992年の約120万部)。これに伴い広告収入も激減し、本社ビルの一部を売却するところまで追い込まれた。

そして10年秋、前記のような100人のリストラとなったわけだが、このリストラと時を同じくして課金モデル移行への模索が始まった。周囲は「有料化などして本当に大丈夫なのか?」と冷ややかだったが、これを成功させるしか、もはや新聞復活への道はなかったといえるのだ。

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