2050年の世界と日本 わたしたちの暮らしはどう変わる?

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アフリカの人口増加、急速な地球温暖化とそれに伴う気候変動、さらに新興国の成長に伴うエネルギーや食糧の需給逼迫──。

人口や気候を中心に、国内外のさまざまな機関が数十年後の世界の姿を予測している。まず、世界のパワーバランスは大きく変動する。GDP(国内総生産)や人口を見ると、米国と中国、インドの3カ国が他国を圧倒し、米中印3極主導の国際政治体制が実現するかのようだ。

気候変動とそれがもたらす悪影響も無視できない。北極の氷に覆われたエリアは縮小し、干ばつや洪水、海面上昇に伴う被害が、特に貧しい国や貧困層を直撃しかねない。

今世紀後半にはアフリカの人口が世界の35%を占め、文字どおり「アフリカの世紀」を迎える。これらの国々が経済発展すると、食生活は西洋化し、エネルギーを大量に消費する人口が増える。資源に限りがある中、エネルギーや食糧をこれまでどおり賄えるのか。資源の争奪戦が勃発しないのか、不安が頭をもたげる。

日本の未来像についても、いくつもの予測が公表されている。

一例が、日本経済団体連合会が2012年4月に公表した2050年のシミュレーション。日本経済について、四つのシナリオを想定している。生産性が先進国の平均並みで推移する「基本シナリオ」では、10年現在で世界3位のGDPは4位に転落。財政が悪化し、成長率が下振れる「悲観シナリオ」では世界第9位まで落ち込み、存在感は大きく低下する。

さらに、「少子高齢化の影響が大きく、30年代以降の成長率はマイナスになる」「15年度までに消費税率を10%に引き上げても、50年の政府債務残高は対GDP比で約600%に達する」。これでもかとばかりに陰鬱な未来像が示される。

だが、経団連の予測が特殊なわけではない。こうした予測はどの機関のものとも多かれ少なかれ共通する。そうした悲惨な未来が私たち日本の等身大の実力を映したものであり、ありえない未来ではないという厳しい現実を指し示している。逆に言えば、現実を認めることで、次のステップに踏み出せる。

たとえば、新日鉄住金の三村明夫相談役は「いま起きている危機は日本にとって初めての危機ではない。危機を適切に認識できれば、物事は動く」と話す。

次ページ人口、地政学、教育がカギを握る
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