投資家が、安倍政権批判を始めるとき 円安、株高はどこかで終わる

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そして、問題は、国債のトレーダーだ。

トレーダーは、為替、国債、株で、すべて異なった人々となっているが、彼らの行動パターンやキャラクターも大きく異なる。株式は上昇トレンドで基本的に儲け、下げトレンドなら、仕方なく空売りをする投資家が多数派だ。

だが、国債では、買い持ちの長期投資家(生保、年金など)と、短期の売買で利益を出すトレーダーとは、まったく違う行動パターンを取る。

一方、為替は、常に短期の乱高下あるいは小さな動きで儲けるトレーダーがほとんどだ。まず、為替トレーダーが円高方向の乱高下にシフトすれば、次は、これまで鳴りをひそめていた国債トレーダーが大きく売りから入ってくる可能性がある。こうなると、流れが変わり、国債暴落シナリオを騒ぎ立てて、トレンドを作るほうが有利になってくる。こうなったときが、180度の変化が訪れるとき、つまり、日銀への圧力がやりすぎだと非難が高まるようになる、潮目が変わるときなのだ。

こうなると、銀行関係者は政権批判を痛烈に始める。国債を持ちすぎているから、空売りで対処しようがないから、国債の下落を抑えてもらうしかないからだ。株を空売りする投資家たちも、政権批判の方が、短期には下落が加速するから、批判を強める。だから、政権は、やりすぎ、ということで、投資家(政治家やメディアの好きな言葉で言えば市場だが、それは誤りだ。市場圧力と言うものは存在しない。その背後には投資家の塊がいるだけだ)全体から攻撃を受けるだろう。

したがって、夏の参議院選挙までに、有権者にも投資家にも見放されないために、安倍政権は政権成立後は、慎重なミスのない、アウェイゲームが求めらることになる。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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