ワンプライスが攻勢 激変する眼鏡業界

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 業界には00年以降、インターメスティックの「Zoff」やジェイアイエヌの「JIN’s」など、5000円、7000円、9000円という、いわゆるスリープライスショップが登場。ファッション雑貨の感覚で2本、3本と購入する若年層マーケットを開拓した。

消費者の購買行動に変化をもたらした同業態には、大手も「オプトレーベル」「ハッチ」などの新業態で参入。00年に約3万円だった平均一式単価は、02年に約2・8万円台まで低下した。だが、その後ブームは下火になり、04年に平均一式単価は再び3万円弱にまで回復。「Zoff」「JIN’s」などはファッション性を武器に今も成長を続けるが、大手のスリープライスは停滞していた。

そうした中で登場したのが、レンズ・フレーム一式単価2万円を切るワンプライスショップだ。「広告チラシを見て1・5万~2万円くらいで買えるかと思って店に行っても、遠近両用レンズや薄型レンズを選ぶと結局3万~5万円、場合によっては7万円を超す金額になる。お客様の立場からは価格に不透明感があり、その点については従来から問題意識を持っていた」とメガネトップの寺澤章取締役は語る。

同社は地元・静岡での「眼鏡市場」出店に続き、知名度の乏しい首都圏で第1号となる新宿東口店を06年11月に出店。ここで集客力に手応えを得た同社は主力業態だった「メガネトップ」約80店を07年3月末までに「眼鏡市場」に転換。さらに残る約230店も一気に業態転換を進めた。新規出店と業態転換に07年度の1年間で約40億円を投入、「まさかここまでやるとは想像以上だった」と業界関係者を驚かせた。

「眼鏡市場」がメインターゲットとしたのは若年層ではなく、従来は弱かった45歳以上のゾーンだ。この年代は遠近両用レンズを使用する比率が高く、一式単価が4万円前後と高額の好採算な客層。購買先をあまり変えない層と見られていたが、税込みで2万円を切る均一価格という価格訴求が成功し、同社の45歳以上の客数は、前年比50%超の伸びを達成した。45歳以下の若年層についても、大手の中には取り込みに苦慮しているところもあるが、メガネトップは従来に比べ客数10%強増加と健闘している。

これからの5年間で業界地図が変わる

メガネトップに追随する動きも出てきた。メガネスーパーは3月20日、一式1万7800円のワンプライスショップ「眼鏡専科」を東京・阿佐ヶ谷、神奈川・横須賀に出店。ただし「今後も中心は『メガネスーパー』。業態転換の計画はない。あくまで地盤の関東圏での『眼鏡市場』への対抗軸として考えている」(佐藤進・IR担当取締役)と既存店とのバランスを重視している。一方、三城はワンプライス販売に否定的。「一律価格では個々のお客様に最適な眼鏡は提供できない」とIRチーフ・磯野昌彦氏は話す。

粗利益率の高い業界だけに売上高の変動は利益の増減に直結しやすく、財務基盤が弱い中小チェーンは苦しい。「大手はM&Aやフランチャイズ化も視野に入れている。ここから5年以内に業界地図は大きく変わる可能性がある」と業界関係者は指摘する。本格的な業界再編が始まる気運が高まっている。
(本多正典 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

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