成功する地方創生は「人づくり」が一味違う 「こうしなさい」では絶対にダメ!

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武田:激変しましたね。まず阿智村の方々が、「自分たちが素晴らしい日本一の星の村に住んでいる」と自覚して、その中で「自分たちは何ができるだろう」と考えておられますよね。

強い地域ブランドになるために

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永井:今後の阿智村の課題は何でしょうか?

武田:地域の方々は十分にわかっていることですが……。実は急に進みすぎていることでしょうか。当初は「10年後、阿智村と言えば星の村、星の村と言えば阿智村、と誰もがイメージできるようにしよう」と考えていました。でも予想以上に速く進んでいます。本来、きっちり年輪を重ねていくことが強い地域ブランドに繋がります。

強い地域ブランドができれば、星の村、美しく豊かな自然、美味しい水、きれいな空気、美味しい食事とイメージし、ひいては行きたい、住みたいときっと思って頂けると思います。でも観光客が増えると、逆に最大の地域資源である自然が損なわれるかもしれません。「星の村になる」というビジョンの下で、観光誘客と自然保全を両輪で地道に進めていくことが大切ですね。

永井:長い目で見ると、松下さんの仕事をキチンと引き継げる人材も必要ですね。

武田:そうですね。地域づくりは時間がかかりますから、賛同する人を増やして、世代を繋いでいくことも長期的な課題ですね。

永井:最後に、他の地域の方々にアドバイスはありますか?

武田:観光を手段としてとらえて、単に観光客数を伸ばすだけではなく、地域にとって観光で何をもたらしたいのかをきっちり考えることが必要ですね。

永井:地域づくり全体のなかで観光をどうやって進めていくかですね。

武田:ビジョンを共有しないと、成功しても失敗してもよくない意見が出てきます。永井さんの本『そうだ、星を売ろう』でも出てきますが、成功すると「あいつだけ儲けている」。失敗すると「あいつらのやり方が悪い」という話になりがちです。だから「10年後、こういう村にしたい。次の子供たちにキチンと継承するために、これをやるんだ」という考えをしっかり持って、戦略を立てながらやることですね。

永井:ビジョンと戦略を持ち、かつ、共有することですね。客観的な視点を持ちながら、地域の方とも一緒に取り組まれている武田さんがこのようにおっしゃると、説得力がありますね。武田さんのお話が、これからの多くの地方創生につながってほしいですね。

永井 孝尚 マーケティング戦略コンサルタント

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ながい たかひさ / Takahisa Nagai

慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMの戦略マーケティングマネージャー、人材育成責任者などを経て、2013年退社。同年、多摩大学大学院客員教授を担当。マーケティング戦略思考を日本に根づかせるため、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立。多くの企業・団体へ戦略策定支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供。2020年からはオンライン「永井経営塾」主宰。著書に60万部超『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ、15万部超『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』シリーズ(すべてKADOKAWA)など。著書累計は100万部超。

オフィシャルサイト

X(旧Twitter) @takahisanagai

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