10代女子に人気の「nana」は音楽業界を救うか 音楽SNSに集まる支持、あのJUJUも活用

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運営するnana musicの代表を務めるのは文原明臣氏(30)。変わった経歴を持つ創業者だ。高専4年生、19歳の時に始めたのは、レーシングカート。同じく19歳でレースを始めた、元F1レーサーの佐藤琢磨(現在はインディカー・シリーズに参戦)に憧れ、毎週のようにカート場に通い、プロを目指した。

nana musicには、複数のベンチャーキャピタルや、ソーシャルゲーム大手のディー・エヌ・エーなどが出資している。代表の文原氏(写真)はシンガーを夢見るほど歌うことが好きだった

レースの世界は練習だけでなく、メンテナンスや運搬、保管など、とにかく高額な資金負担がつきまとう。バイト代をつぎ込み、一度は資金を工面するために、メーカーに就職したほどだ。F1の登竜門とされるF4にも出場を果たしたが、活動資金が底を付き、2009年にレーサーの夢を断念する。

夢は破れたが、ちょうどその頃、文原氏は後の起業につながるテクノロジーに出会う。ひとつは短文投稿サイトの「ツイッター」。数多くのユーザーのつぶやきが集まる世界に感動し、のめりこんだ。もうひとつは当時、日本で初めて販売された「iPhone 3GS」だ。

「We Are The World」が起業のきっかけ

「歌うことが好きで、ジャズバーで歌えるシンガーになりたいと思っていた」。レーサー以外にも、そんな夢を抱えていた文原氏は、iPhoneのボイスメモ機能や録音機能のあるアプリを活用し、ハモりの練習をするなど、テクノロジーの進化を大いに楽しんでいた。

起業のきっかけとなったのは、動画サイトで見た名曲「We Are The World」。マイケル・ジャクソンが中心となって1985年に発売された、「USA For Africa」のバージョンではない。2010年、ハイチ地震のチャリティソングとして有名アーティストが再録した、「We Are The World 25 For Haiti」。これを世界中の一般ユーザー57人が歌いつなぐ動画に心を揺さぶられた。

「世界中の人達と音楽で盛り上がれる場所を作ってみたい」。そう考えたが、実現には音楽ソフトや機材、編集の知識などが必要だ。どうすれば簡単にできるのか。そこで目に入ったのがiPhone。「iPhoneの機能を活用すれば、『We Are The World』を実現できるのではないか」。nanaを着想した瞬間だった。

その後2011年12月にnana musicを設立、一時は米国でのサービス投入を画策したが、開発の遅れや資金面の都合から、日本に舞い戻った。孫泰蔵氏が主催していたベンチャー支援プログラムへの参加を経て、2012年にサービスをリリースしている。

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