「会議好き」上司は、部下からの人望をなくす その積極性、「ハタ迷惑」ではないですか?

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解説Ⅱ いったん止まって核心をつかむ

仕事から距離をとって眺めるためには、普段の多忙感をいったん落ち着かせることが必要です。「一止」。坐禅の言葉ですが、いったん止まれば正しくなるという意味(一と止を上下に繋いで書くと正になる)。普段、忙しく動き回っている私たちだからこそ、いったん止まってみる。冷静になってみる。そこで初めて、問題を真っ正面からとらえることができるのです。

課長の仕事は、断片的です。その時その場での判断が求められます。その結果、意識的に努力しなければ、目先の対応に忙殺されます。心も忙しく、きちんと考えることもなくなります。部下も上司に振りまわされて落ち着きをなくします。上司が、心を落ち着け、じっくりと考えて問題の核心をつかんでこそ、部下が上司を頼りにするのです。深呼吸をして動きを止め、問題を大きくとらえる。これが優れた上司の入口です。

ダボハゼのように何でも食いつくな!

中嶋の問③:何が大事なの?!

中嶋:ぼ~っとするのは良いとして、鋭さもいるよね。問題の切り口が鋭くないとね。

宇貝:「ぼ~っとして、鋭い」。禅問答みたいですね。

中嶋:そう。リラックスしていて、必要なとき頭を集中して使う。自分が最も力を入れるべきことに集中する。それがコツだよ。ダボハゼみたいに何でも追いかけてはダメだよ。

宇貝:だから先輩は「そもそも」を大事にしろと言われるんですね。

中嶋:そうそう。そもそも、何が大事なのかをしっかりと押さえておくと、枝葉の問題と幹の問題を間違えないですむからね。

宇貝:「そもそも」を大事にすれば、部下が「もそもそ」しなくなるってわけですね。

中嶋:今度は君が語呂合わせか……。

解説Ⅲ 「そもそも」を語るからこそ、部下が師事する

優れた課長の条件は、部下に「そもそも何のために」を語ること。職場の使命やビジョンと同時に、仕事をするうえで大事にしないといけないことをきちんと語ること。それが部下の考えの基軸になり、部下の知恵をうまく活用できるようになるわけです。

部下が「そもそも」に対して、「なるほど」と思うことで、部下の知恵出しに方向性が生まれます。上司の言うことを聴いてみよう。上司に師事しようという気持ちが生まれるわけです。課長が焦ってしまい、基軸となる考えを表現できなくなると、部下はいかりのない船のような状態になり、知恵を発揮できなくなります。焦って対策会議をするよりも、いったん落ち着くことを大切にしましょう。

中嶋 哲夫 人事教育コンサルタント、MBO実践支援センター代表

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なかしま てつお / Nakashima Tetsuo

1948年生まれ。京都大学経済学部卒業。20年間の企業生活(鐘淵化学工業、現・カネカ)において、企業内ベンチャー、営業、人事の業務を体験。人事部門では、社員教育と人事企画を担当し、目標管理制度の運用に従事。仕事を通じて学ぶ目標管理に共鳴し、その考え方と実践ノウハウを現場管理者とともに開発。1991年に退社し、人事教育コンサルタント。産労総合研究所MBO実践研究所顧問を務めた後、MBO実践支援センターを設立。代表として良い職場づくりを目指す人事担当者と管理者を指導する。数多くの企業において、目標管理を活かした職場づくりを指導している。この間、大阪大学大学院国際公共政策研究科に進み、人事評価データや賃金データの統計解析を研究。2007年に博士(国際公共政策)。現在、大手前大学、大阪商業大学大学院にて非常勤講師を務める。著書に、『岐路に立ったら読む ライフマネジメント』(共著、中央経済社)、『目標管理ハンドブック』(共著、経営書院)、『人事の経済分析』『人事の統計分析』(ともに共編著、ミネルヴァ書房)など。

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