キャリア自律を促進する「博報堂大学」 人材育成理念を中馬淳・人材開発戦略室室長に聞く

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「電博」と言えば、広告業界の二大巨頭だ。働く人材にはおしゃれでクリエイティブなイメージがある。学生の就職先としての人気も高い。しかし、よくよく考えてみれば、広告代理店が扱ってきたマスメディアは衰退ぎみだ。テレビ視聴率も、新聞購読者数も減少し続けている。

博報堂 中馬淳・人材開発戦略室室長

マス広告を扱えばそれで万事オーケーという時代は終わっている。とすれば広告代理店の役割も、必要な人材像も変わってくるのは当然だ。そして人材育成も旧来型の職場だけで育てる方法が通じなくなる。

こういう変化は広告代理店だけでなく、あらゆる企業と職場で起こっているはずだ。この問題に企画のプロフェッショナルである博報堂が出したソリューションが「博報堂大学」(正式名称:HAKUHODO UNIV.)だ。どのような内容なのか? 赤坂Bizタワーの博報堂本社を訪ね、中馬淳・人材開発戦略室室長にカリキュラムや目的を聞いた。

――広告代理店は製造業、流通業、小売業と異なり、モノを扱わず情報を流通させる業種です。そしてその情報に革命が起きています。広告代理店の役割の変化について教えてください。

 広告代理店は、もともと媒体社の代理として広告を集めるところから始まっている。そして時代を経るにつれ、広告主の代理という色彩も強まってきた。そして今日では広告主の広告制作だけでなく、マーケティング戦略の策定や実行という業務にも拡大している。

役割は変化し続けるが、業務にアイデアや発想が求められることは変わらない。多様な発想を重視するので、多様な人材を育成してきた。私は27年前に博報堂に入社したが、その頃から「粒ぞろいより粒違い」という言葉を使っていた。一律に育成するのではなく、個性を重視して育成するのが博報堂の人材育成だ。

――人材育成の専門機関として「博報堂大学」を2005年4月1日に開校されておられます。その背景を教えてください。

博報堂は以前から人材育成に熱心に取り組み、多様な研修制度があった。05年に開校した背景は、人事から独立した社内教育機関を立ち上げることで、一貫した人材育成のシステムを作ろうと考えたからだ。現会長の成田純治が03年に社長に就任し、この方針を打ち出し、05年の開校につながった。

その背景には、画一的なビジネスモデルが通用しない時代になったことがある。かつての社員は一本道のキャリアパスを歩けば済んだかもしれないが、現在は違う。キャリアは変化し、キャリア自律が求められている。そこで若手人材はもちろん、すべての社員を育成するために「博報堂大学」を設立した。

ただすべてのキャリア設計を「博報堂大学」が受け持つのではない。たとえば博報堂には新卒入社時から8年間に2回異動させる「多段階キャリア選択制度」があるが、それは人事局と「博報堂大学」を所管する人材開発戦略室が協働して行っている。

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