FRBのインフレ目標政策の考え方 新たなコミュニケーション政策を導入(Fedウォッチャー)

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第1に、バーナンキ議長にとっては、「9月こそが大幅な緩和策を決めた日」であり、今回はその決定に従っているに過ぎない。すでに9月の会合で「労働市場の十分な回復が見られない場合には、(中略)追加的な資産購入を実施」することを決めていた、ということだ。

第2に、終了するツイストオペと今後の長期国債購入では、緩和効果がほぼ同じと考えられるためだ。

国債を対象とした量的緩和策の効果は、「購入金額×デュレーション」によって比較することができる。いわゆる金額デュレーションと呼ばれる考え方に立つもので、量的緩和策によってFRBが市場から吸収する金利リスクの総量にあたる。FRBが金融市場から吸収する金利リスク量が多いほど、民間投資家はそのリスク量に見合う資産を新たに購入せざるを得ない。それが債券価格を押し上げ、金融緩和につながるというわけだ。

今回の決定をみると、国債の毎月の購入ペースはツイストオペと同じである。したがって緩和効果の違いはデュレーションによって左右される。ここではデュレーションの代わりに残存期間(ニューヨーク連銀の公表値)で比較してみると、今後買い入れる予定の長期国債の加重平均残存期間は11年となり、ツイストオペの12年(短期国債の売却分を含む)とほぼ同じだ。つまり、ツイストオペとやっていることは変わらない、ということになる。

さて、バーナンキ議長は記者会見で、中央銀行のバランスシートの規模ではなく、資産の中身によって緩和効果が左右されると説明した。筆者の試算では、FRBがバランスシートに抱えている米国債の金利リスク総量は、11年末時点の9.5兆ドルから12年11月末時点には13.3兆ドル(41%増)へ膨らんだ。円換算すれば730兆円から1100兆円へと、371兆円の増加だ(正確にはドル・年、または円・年という単位になる)。

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