「私は自民党の反対勢力ではない」 日本郵政のトップ交代、坂篤郎氏が社長就任

拡大
縮小

――仮に新規事業が4月に間に合わなかった場合、業績に与える影響は。

 間に合わないことは想定していない。いまは間に合うように一生懸命審査を受ける。

――上場に向け企業価値をどう高めていくか。

 いま日本郵政の経営基盤はしっかりしている。足下では収益力もある。問題はどの事業も縮小気味であること。ゆうちょもかんぽ生命も今のままでは力強さがない。一つ一つ手を打って、グループの将来性を確かなものにしたい。10月に経営ビジョンを発表したが、さらに具体的な数字を入れた中期計画を策定中だ。

新規事業に関して、住宅ローンは控えめな申請だと思っている。ゆうちょ銀行は現在資産運用の半分が国債だが、その基本的なスタイルはかわらない。ただ、金融機関は仕事の多様性が必要だ。いろいろな事業をもつことは、収益性や安定性などを高めるために必要なこと。かんぽ生命(の学資保険)は新規事業いうより、従来商品の改訂。お客の需要に合わせて商品変えるのは、サービス上も、経営上も重要なことだ。

民営化の目的はカネの流れを変えること

――銀行業界では、ゆうちょ銀行は公的金融に近い業務をやるべきという声もある。

 そもそも民営化の目的は、ゆうちょやかんぽ生命のカネの流れを民間のほうに切り替えるべき、多様化すべきという考えがあった。それにお答えするのが役割だ。

――かんぽ生命の新規事業として、ガン保険など、第三分野に進出する考えはあるか。

 特段の結論はもっていない。お客さまの需要を見て、どんな商品がいいのかを今後検討するが、具体的な計画はない。

――グループの一体化をどう進めるか。

 郵便局会社は法律が通ってから半年で統合したために、システムや人事制度を直し切れていない。もう少し組織のスリム化をやっていく。今後は金融も含めたユニバーサルサービスを提供することが使命であり、郵便局をハブにして3事業をいかに顧客志向で、安定的に提供するか。そもそもグループが一体化されないと達成できない。

――斉藤さんの現在の心境は?いつ坂さんに社長就任を打診したのか。

斉藤 しばらくはぼんやりしたい。本でも読んで過ごしたい。取締役は来年6月まで任期があるので、非常勤の取締役としてとどまることになるのではないか。ただ、公務はすべて坂さん以下に任せ、私は何もしない。

坂さんとはあうんの呼吸もある。正式に言ったのはそれほど前ではない。

――官と民の違いをどう認識しているか。

私はもともと商家の生まれ。民間で商売的なものの考え方をすることに違和感はない。むしろ官僚の時のほうが違和感あった。(日本郵政は)ほかの民間会社と比べると新しいチャレンジが少ない。ビジョンでは社風改革を柱の一つとしている。昨年6月からは郵便事業会社で支店ごとの損益算出を始めた。ステップを踏みながら、収益力ある民間企業になっていきたい。

(撮影:今井 康一)

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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