女性が輝かない会社は裁量と対話が足りない 先進企業「P&G」に学ぶ3つのポイント

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(2)時間ではない「評価軸」の設定

P&Gでは、メンバーは一人ひとり、その上司と話し合い、年度初めに仕事の中での「5つの優先事項」を決定することになっています。5つについて、1対1で話し合って合意をして決めていくのです。上司にとっては、この5つをメンバーに達成させることがその上司の側の「5つの優先事項」の1つにはいっています。つまり、決めたらあとは部下に丸投げ、というのではなく、部下の状況に応じて使える制度をアドバイスするなど、年度末には5つとも達成できるよう、徹底的にサポートすることになっています。

この5つの優先事項を決めるポイントは3つあります。それは、各項目が①会社の戦略に沿っていること、②5つの事項すべてに上司と本人とが合意すること、③達成の目標についても合意することが必要です。つまり、ここに“働き方”は含まれないのです。

長時間働いてこの目標を達成したい人もいるし、短時間で働きたい人もいる。あくまでも、この達成度合いで評価が決まります。そのためには、個人がピークの成果が出せるようにどうしたらいいのか、働く時間をセーブしながら成果を出すにはチームでどうフォローしていったらいいのか、等、上司もサポートをすることになっているのです。

この仕組みがあると、「あの人は○時間しか働けないから大事な仕事は任せられない」ではなく、その人が「やるべき仕事」「やりたい仕事」に寄り添った仕事を組み込みやすくなります。また、突発的に1人が仕事をできない状況になったときは、チーム全体の優先事項を見直した上で、ほかのメンバーの優先事項も見直して変更していくという仕組みがあります。こうした評価と仕事のアサインの機動性によって、会社全体としても、それぞれ個の力を引き出しながら仕事をしやすいということになります。

上司と部下のミーティング

(3)face to faceのコミュニケーション~話さなければ、わからない

(1)の制度を誰もが使いやすくし、(2)の5つの優先事項をすべてのメンバーが達成するために、ベースとなり、かつ最も重要なものがコミュニケーションです。

40歳前後以上の読者なら、自分たちが若い頃と違って、「背中を見て仕事を覚えろ」はもはや通用しないことを、痛感しているケースは多いとは思いますが、女性部下が増えることは多様化の一端にすぎません。同じ個人であったとしても、その人の成長、あるいはライフイベントなどによって、能力・働ける時間・仕事に対する価値観は、働く数十年の間に変化するのです。

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