景気低迷の真犯人は、技術革新の停滞か? 米国を賑わすイノベーション論争

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技術革新頼みの景気回復案は甘い

財政難に陥っている政府が、すぐにも必要な公共インフラプロジェクトを先延ばしにしていることによって、中期的な成長も犠牲となっている。さらに、先進国の高齢化など社会的なトレンドも将来的な経済成長の重荷となっている。こうした危機を抱えていない国でも、年金や健康保険システムについては厳しい見直しが必要とされている。

こうした状況を踏まえると、トレンドが実際のGDP(国内総生産)を1%程度下回る事態が今後10年間かそれ以上続くことが容易に予想できる。

ティエル氏、カスパロフ氏、ゴードン氏らによる仮説は正しく、今後の見通しは非常に暗い。改革はまさに待ったなしの状態だ。金融危機の後に練られた多くの経済再生案は技術革新に伴って生産性が向上することを前提としており、将来的にはこれによって持続的な経済回復が訪れることになっている。しかし実際、われわれに残されたオプションはそれよりもっと痛みを伴う改革を行うこと以外にないのである。

(週刊東洋経済2012年12月22日号) (C)Project Syndicate

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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Kenneth Rogoff

1953年生まれ。1980年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1999年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年にIMFのチーフエコノミストも務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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