ガンダム、40年のヒットは努力の結晶だった バンナムHD田口三昭社長が秘訣を語る

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──昨年は「パックマン」など自社IPを、ゲームやアプリ、コンテンツなどに無料で使えるよう解放した。自社ブランドの毀損につながる懸念はないのか。

昨年4月に「パックマン」「ギャラクシアン」など21タイトルを対象にしたIPオープン化プロジェクトをリリースしたら、ものすごい数の応募が来た。こんなにリアクションがあるとは思わなかった。

「パックマン」は1980年にナムコが発表したアーケードゲーム。(会社提供)

いちユーザーとしてパックマンが好きで、ほかの会社で別の開発をしているたくさんの人が、パックマンを触れるならやりたいと手を挙げてくれた。これは先ほど話した、多角化したIPを立体的にするために性格づけや特徴を引き出せるという効果に似ている。

自分たちの単眼的な見方じゃなく、客観的に外部の会社から見てゲームを開発してみたらIPの価値が上がる可能性もある。社内でも「えー!」「びっくりした」と言うようなことが起きた。これからも構造的に取り入れなきゃだめだと思った。

そもそも自分たちは、IPにはライフサイクルがあると勘違いしていた。今の時代にもう一度ハイライトを当てても難しいという勝手な思い込みがあったし、ブームが去ったIPを再び立ち上がらせるのはカロリーが必要だ。

コンテンツは生みの親より育ての親?

──オープンイノベーションから学ぶことは多かったと。

われわれは、オープンであるようでオープンじゃなかった。あるIPに対し、社内では「この子はおとなしめで、たぶんお役所に勤めて」なんて思っていたが、本来は全然違ってラッパーみたいになっちゃうかもしれない。やってみないとわからない。

すべてのIPは育ち方が異なり、それは生みの親より育ての親の方がわかっている場合もある。ファンはつぶさに、きめ細かく見ている。メーカーとしての視点だけでは足りず、顧客視点の意見をもっと聞きたいということが今回の取り組みでわかった。

これで大儲けできるわけではないが、当社の懐が少し広く感じられるようになった。別の価値観を受け入れることで、全然違うライセンシーになれそうだなとも思った。逆に言うと他社さんから、「もう一度、このIPを使いたいけど知恵を貸してくれないか?」と言われるようになりたい。

(撮影:尾形文繁)



 

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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