安倍政権誕生で為替はどう動くか? 市場動向を読む(為替)

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市場の期待にも応え続ける必要が生じた

言うまでもなく、今後自民党が問われるのはこうした国民の期待に応えられるかどうかである。しかし、今回、市場の期待を上手く利用し、味方に付けたことにより、自民党は、国民の期待だけでなく、市場の期待にも応え続けなければならないことになった。市場の期待にも応え続けられなければ、円は買い戻され、株価も下落し、結局は国民の期待も失望に変わってしまうという結果になってしまう可能性さえある。

自民党が日本国民の期待に応えられているかどうかの最初の審判は、来年7月の参議院選挙になると考えられるが、市場の審判はそんなに長くは待ってくれない。先週、欧米のヘッジファンドやロンドンとニューヨークのオフィスの同僚からは、「総選挙後、補正予算はいつ成立するのか?」、「日銀法改正はいつ行われるのか」「200兆円の国土強靭化計画はいつから始まるのか?」といった質問が相次いだ。市場は一つの事柄が終了すれば、すぐに次の動きを求めるようになる。

「年内に行われる特別国会では特に新しい動きはなく、1カ月後くらいに通常国会が開かれ、2月頃には10兆円程度の補正予算が成立するだろう。日銀法改正はそう簡単に行われる話ではなく、改正されるとしても数カ月は要するであろう。また、200兆円の国土強靭化計画は具体的にどういう話なのかははっきりしない」。

こうした回答に、満足する海外投資家は少ない。海外投資家は自民党政権がかなり大胆な財政拡大路線を採ると期待しているようであるが、公務員の人件費削減、プライマリーバランスの改善を公約に掲げ、消費税引き上げを前にした政権が、本当にそれほど大胆な積極財政路線に転換するのだろうか。

市場の期待というのは、際限なく広がり、最終的には失望という結果で終わることが多い。市場が失望し、円相場が反転上昇し、株価が反落すれば、結局は国民も失望することになる。市場の期待・動きを上手く利用して勝利した自民党・安倍政権は、今度は市場の期待を裏切らないように政策を積極的に進めていかなければならないと考えられる。

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