松下幸之助は「宗教」をみて「経営」を悟った どうして宗教は盛大で力強いのか

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「いまふり返ってみると、やはりその時どきの段階において、店の使命に違いがあったように思うな。最初はともかく食べていくために、仕事をしなければならんかったから、ひとつ電気器具の製造でもやろう、というきわめて平凡な考えで出発した。しかし一年たって五人の人が働くようになると、その人たちの将来ということも、考えなければならん。また、お得意先も何十軒かできてくる。やはりその人たちの立場というものも考えんといかん。自然にそこに責任感も生まれ、小さい町工場ながら、使命感というものを感ずるようになる」

こちらが良くなれば向こうは悪くなる

しかし当時、商売は、カネ儲けをすればいいという考え方が通念であったから、商売そのものが、あまり社会的に高い位置にあるとはいえないという事情もあった。

「わしの店の近所に同じ仕事の店をだす人がいて、それでおのずと競争になる。ところが競争になれば、たいていわしのほうがうまくいくんや。それはいいのやけれど、その店がだんだん不景気になって、ついには潰れてしまった。競争だから仕方ないと言えばいえるが、さあわしは困った。こちらが良くなれば向こうは悪くなる」

そのようなことがあると、果たして自分は商売ということをしていていいのか、悩みが生まれてくる。仕事に取り組む力も弱くなってくる。松下は、なぜ自分は物をつくって商売をしているのか、果たしてこれでいいのかと考え込んだ。しかしいくら考えても、結論はでなかったという。

「昔な、取引先の人が来てな。その人はある宗教の信者の人やったけど、わしに信者になることを熱心に勧めるんや」

その人の熱心さに押されて、とにかくその宗教の本部を見学することだけはしてみようという気になったという。連れられて行くと、そこには驚くような光景があった。街の半分と言ってもいいほどの、主だった建物が教団の施設であった。本殿に案内されると、今度はその建物の大きさに圧倒された。

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