ライター戦国時代!異業種参入組の正攻法は 「優雅なノマドワーク」は都市伝説にすぎない

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それを読んで、もし自分がそういうことを聞かれたら何を答えるかなぁ、と考えてみたが、たぶんスキルアップしたいライターさんにはまるで役に立たないことしか思い浮かばなかった。なぜならば、僕は「ちゃんとしたルート」でライターになってないからである。

今活躍しているPC・IT・ガジェット・家電系のフリーライターは、たいていどこかメディアの編集部にいて記者や編集者をやり、それからライターになった人がほとんどだ。一方僕はといえば、2000年前後まではフリーのテレビ放送技術者で、副業のような形で小さいレビュー記事を書いていた。そこからたまたまPCの世界が動画へと傾き始め、当時のPCライター界には動画のことがわかる人がいなかった。だから重宝されたわけだ。小論文だけで一芸入試に受かった帰国子女みたいなものなんである。

だから自分のようなライターになりたいと言われても、お伝えできるノウハウとか何もない。すごい頑張ったわけでもないし、戦略的に進めてきたわけでもない。なんか気が付いたらここに立ってたという、呆れたヤツなのである。

ライター業界にできてしまった「空白の世代」

しかしネットを検索すると、ライターになりたいという人がたくさんいて、Webメディアもライターをバリバリ募集していて、エラいことになったなと思っている。ほんの5〜6年前までPC/IT系ライターの間では、若い子が全然入ってこない、このままみんな歳とっていっちゃうという危機感を持って仕事をしていたのがウソのようだ。

それが1本2000円ぐらいのギャランティで原稿が募集され、月額10万円稼ぐにはどうやって効率よく記事化するか、みたいなブログが人気だったりするみたいだ。記事1本がどれぐらいの分量なのか知らないが、単価2000円で10万円稼ぐとなると、月に50本書くことになる。1カ月20日働いたとして、1日2〜3本の記事をコンスタントにあげることになる。

ブログ形式で短いエントリーを多発するメディアとか、プレスリリースを拾って流すニュースサイトだと、1人の編集者が出す記事量はだいたいそんなものかもしれない。だがネタを拾って取材したり調べたり考えたりして書く記事を1日2〜3本となると、それこそ一日中パソコンの前に張り付いていても達成できるとは思えない。したがって努力の方向性としては、数を増やすことではなく、単価を上げる方向が正しいということになる。

ベテランと言われるライターは、当然ながらそんなギャランティでは仕事をしていない。だから2000円で記事を書いているみなさんは我々の話を聞きたがるのだろうが、そこにはものすごく大きなキャズムがある。

今IT分野の主力ライター陣の年齢層ってだいたい40代じゃないかと思うが、普通だったらそこから5年10年年下の子が弟子のようにくっついて、そこで仕事を覚えて同じ世界で食うようになる、というのが一般的なんじゃないかと思う。だが今のライター業界には、30代ぐらいの年齢層がものすごく少ない。外資系のWebメディアには20代の若手が採用されたりしているみたいだが、今のライター業界、ジジイB……と若い子しかいないんである。

次ページ「共通言語」を持たない2000円ライター層が出現
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