アジアには、民主選挙より独裁が向いてる? 欠如する民主主義のインフラ

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ところで16日には、投票に行かれますか? おそらくあなたは若者の政治への無関心を嘆きつつも、選挙当日は来月で4歳になるお子さんと代々木公園でフリスビーに興じるのではなかろうか。なにせ、あなたの清き一票が政策や日本を変えると思えない失態が繰り返され、不安定な政権ばかりが続いているだから、無力感を抱くのも無理はない。

思えば小泉政権下で郵政民営化という争点で大勝した自民党の後継者が、郵政改革反対で離党した人を復党させ、その見直しばかり推し進めたのは何だったのだろう。

最近の財政再建の議論の揺り戻しもすごい。数年前まで国債発行30兆円枠といって大騒ぎしていたが、今や90兆円を超える史上最大の予算の内、半分が赤字国債で賄われている。そもそも税金を低くできないのも、教育に予算を割けないのも、高齢者の年金や福祉をカットしなければならないのも、自民党政権下で繰り返された数百兆に上る公共事業の賜物だ。

もし自民党に政権が戻ったら、同じような、というか、さらにひどい公共投資が実施されかねない。実際、200兆という信じられない規模の公共投資が取りざたされている。

200兆円公共事業・日銀国債引き受けは平成の徳政令

さまざまな経済学者も心配しているが、いくら金融緩和しても資金が銀行の口座にたまるのは、日本企業が史上最高レベルにキャッシュリッチなうえ、マネーの需給が極めて緩いからである。仮にインフレでマイナス金利にして現金を持つことを懲罰することで投資を誘発すれば、それはバブル以外の何物でもない。

これは本質的には“平成の徳政令”である。銀行を通じ、年金を通じ、郵貯を通じ国債を持たされている国民の資産価値、国が国民に負っている債務の価格を大幅に下落させようとしているのだ。潜在的には名目GDP比負債比率は減るかもしれない。しかし借金を返済して減らすのではなく、インフレで吹き飛ばして減らすのだ。

当然中央銀行の独立性と政府への信認に大きな傷がつくが、いちばんバカを見るのは政府を信じて国債を買い続けてきた、というより、年金などを通じて買わされてきた国民だ。日銀が本当に引き受けるなら、この政策は、国債の資産家から持たざる者及び国への富の強制的な移転である。

もしくは自民党の総裁は、口先介入で「わかってない投資家が動いて円安に振れる」という戦略的な期待でやってるのだろうか。投資家自身は馬鹿な政策だと思いつつも、“他の馬鹿な投資家”がそれで動くだろう、という期待の下、円を売ることがある。総裁が考えていることが後者であることを祈るのみだが、この金融政策上も財政政策上も極めて重要な論点が、その副作用も含めて有権者に十分に理解されていないのは残念だ。

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