5月の米非農業雇用者数、わずか3.8万人増 2010年以来の低い伸び、何があったのか

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 6月3日、5月の米雇用統計は非農業雇用者数が3万8000人増となった。写真はニューヨークの職業訓練・人材関連の催事会場で2013年12月撮影(2016年 ロイター/Eric Thayer)

[ワシントン 3日 ロイター] - 米労働省が発表した5月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が3万8000人増となり、2010年9月以来の小幅な伸びとなった。予想の16万4000人増も大幅に下回った。

米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ<VZ.N>のストライキのほか、製造業と建設業で雇用が大きく減少したことが響いた。労働市場が軟調であることが示されたことで、連邦準備理事会(FRB)の利上げが困難になる可能性がある。

3月と4月分は5万9000人下方修正された。

4月からストライキに入っていたベライゾンの従業員は今回の雇用統計の調査期間に給与を支払われていなかったため、統計上失業者と見なされた。政府はベライゾンのストにより情報部門の雇用の伸びは3万4000人押し下げられたと推計。ストは妥結し、ストに入っていた従業員は6月1日付で職場に復帰したため、6月の雇用者数は底上げされると見られている。

5月の失業率は4.7%と、前月の5.0%から低下し、2007年11月以来の低水準となった。予想の4.9%も下回った。5月は労働人口が45万8000人減少、労働参加率も62.6%と、前月から0.2%ポイント低下した。

より広義の失業を示すU─6失業率は9.7%と、前月から横ばいとなった。

時間当たり賃金は前月比0.2%(0.05ドル)増、前年同月比2.5%増にとどまり、有意な増加の兆候はまだ見られていない。エコノミストは、インフレ率をFRBが目標としている2%に押し上げるには時間当たり賃金が3─3.5%増加する必要があるとの見方を示している。

ボストンカレッジのピーター・アイルランド教授(経済学)は「統計内容は思わしくなかった。FRBは今月、もしくは来月は利上げをためらう可能性がある」と指摘。

アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏も、雇用者の増加数が失望的だったことや、3月と4月分が下方修正されたことなどを踏まえると、FRBは当面は非常に緩和的な政策を維持すると見られると指摘。今回の「異例な」雇用統計を受け、FRBは難しい舵取りを迫られるとの見方を示した。

雇用統計発表を受け、短期金利先物相場で夏の間に利上げが実施されるとの観測が後退。CMEフェドウオッチによると、6月利上げの可能性はほぼなくなったほか、7月の利上げの確率は37%と、前日の59%近辺から低下した。また、フェデラルファンド(FF)金利先物の水準に基づくと、利上げが11月に実施される確率は約52%、12月は68%となった。年内に1回以上の利上げが実施されるとの観測も後退した。

ただ一部エコノミストの間では、5月に雇用の伸びが軟調となったことは穏やかな天候に恵まれた2月と3月の伸びの反動だったとの見方が出ているほか、今回の軟調な結果は過去2四半期の成長鈍化の影響が遅れて表れている可能性があるとの見方も出ている。

JPモルガン(ニューヨーク)のエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「雇用の伸びは経済成長率の伸びに遅行する傾向がある」と指摘。年末年始は成長率の伸びは鈍化していたとし、「経済活動全体が上向くに従い雇用の伸びも回復する可能性がある」と述べた。

5月は軟調だったもの、年初からの毎月の平均増加数は15万人。イエレン連邦準備理事会(FRB)議長は労働人口の伸びに対応するためには毎月平均10万人の雇用増が必要との見方を示しているが、これを上回っている。

5月は民間部門全体の雇用者数は2万5000人増にとどまり、2010年2月以来の低い伸びとなった。

財生産部門の雇用者数は3万6000人減少。2010年2月以来の大きな減少となった。鉱山業は1万人減と、引き続き減少。鉱山業では2014年9月のピーク以来合計で20万7000人の雇用が失われている。製造業も1万人減少、建設業は2013年12月以来最悪となる1万5000人減となった。

一方、サービス部門は6万1000人増。このうち小売業は1万1400人増加した。ただ、卸売業は1万0300人減、正規雇用の先駆けとなる可能性のある人材派遣業は2万1000人減となった。

ベライゾンのストライキの影響を除いても雇用の伸びは7万2000人増にとどまっていた。

政府部門の雇用者数は1万3000人増となり、7000人減となった前月から増加に転じた。

*内容を追加して再送します。

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