会社員が「節税」もできる投資法、ついに解禁 法改正で税金が「毎年8万円」戻ってくる!?

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では、なぜ今までこの制度があまり知られていなかったのかというと、一言でいえば“PR不足”以外のなにものでもありません。

税の問題はともかく、「個人型確定拠出年金」で運用できる金融商品のコストが安いというのは、投資家の側からすれば大きなメリットですが、金融機関側から言えば、あまりうまみがないからです。

これからは誰でも利用できるようになる

さらにこの制度を利用できる人は、主に自営業やフリーランスなどの人たちと「企業年金制度」のない会社に勤めているサラリーマンだけでした。ところが5月24日に法律の改正案が成立し、一部の例外を除いて誰でもこの制度を利用できるようになりました。

今までは加入できなかった公務員や専業主婦などの人たちも加入できます。また企業年金制度のある会社に勤めているサラリーマンも、少し手続きが必要なものの、加入することができるようになります。これによって加入対象者は一挙に増加することになります。

もともとこの「個人型確定拠出年金」は米国のIRA(Individual Retirement Accounts)と非常によく似た制度です。米国においては、この制度が始まったのは1970年代の半ばですが、日本と同様、当初は自営業など、企業年金に入れない人が対象でした。

ところが1981年に法律が改正されて誰でも入れるようになると認知度も大きく向上し、普及が拡大した結果、現在では米国における企業型の確定拠出年金ともいうべき401kプランを残高で大きく上回るまでになりました。

日本においても、今後はますます自助努力による老後資産形成の重要性は高まると考えられます。おそらく米国のIRA同様、個人型確定拠出年金は今後大きく拡大していくことが見込まれることでしょう。

事実、昨年1年間での個人型確定拠出年金加入者の増加数は4万人となっており、数年前の1万~1万5000人程度をかなり上回るペースで伸びてきています。ぜひこの制度の仕組みを知って、最も効果的なやり方で老後に向けた資産づくりを考えていくことをお勧めします。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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