NTT、「IFRS導入」で浮かび上がる戦略の重点 会計基準変更で巨額の増益メリットを享受

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IFRSによる決算発表は2019年3月期の第1四半期(4~6月期)から開始する。これを機にNTTも、NTTドコモもニューヨーク(以下NY)証券取引所の上場を廃止する。NTTは1994年9月、NTTドコモは2002年3月に米国預託証券(ADR)をNYに上場しているが、最近では取引量が極めて少なく、上場を維持する意義が薄れていた。

2018年3月に上場廃止を申請し、同4月に上場廃止となる見込みだ。合わせて米証券取引委員会(SEC)への登録もやめる。

海外M&A戦略を一気に加速するのか?

光回線、スマホ販売など国内市場が成熟する中、海外の拡大はNTTグループにとって最重要課題。IFRS導入を機に、グループは海外M&A戦略を加速させることになりそうだ。

海外M&Aを重要な成長戦略と位置づけるNTTデータの岩本敏男社長。IFRS導入で本領発揮か

海外戦略を担うNTTデータは日本基準を採用しているため、M&Aに伴うのれんの償却負担が増え、海外事業はほとんど利益が出ていない(持ち株会社のNTTは米国会計基準のため、連結決算上の影響はない)。

IFRSを導入すれば、のれん償却を気にせずにM&Aを積極化できるというわけだ。鵜浦社長はNTTデータの業績動向も気にかけて、導入を決めたのだろう。

かなり特殊な事例となったNTTグループだが、日本において定率法を採用する装置産業の大企業は多い。移行に伴うメリットを最大限に活用する手法は、今後IFRSを導入する企業のモデルケースになる可能性もありそうだ。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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