消費増税を争点にしない政治は究極の無責任 安倍首相は公約をいとも簡単に反故に

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2017年4月の10%増税では外食を除く飲食料品に8%の軽減税率が導入されるはずだった。事業者は、複数税率に対応したレジや受発注システムに替える準備作業に、すでに走り出していた。中小企業庁も15年度予算の予備費でこうした支出への補助金996億円を用意していた。広報・啓発や相談窓口向けに予算計上した170億円はすでに支出。結局、そのカネは、まったくの無駄金に終わったわけだ。

準備作業が骨折り損になるだけならまだいい。消費税を財源とした社会保障支出などもあきらめれば済む。だが、“2019年秋までの3年半、消費税率を引き上げることができないほどの経済情勢"という、政府の認識が意味するところは重大だ。

2019年まで日銀は国債を買い続けるのか

自民党で財政再建に関する特命委員会の事務局長代理を務める橘慶一郎・衆議院議員は「消費税率を2019年秋まで上げられないということは、その時期まで経済情勢が悪いということ。となると、日本銀行の異次元緩和も、その時期まで続くことを意味する。しかし、日銀が600兆円規模まで国債を買い進めるシナリオが、現実的にありうるのか」とアベノミクスの看板政策の持続可能性に疑問を呈する。

日銀は、マネタリーベース(MB)を年間80兆円増やすペースで国債を買い続けており、5月31日現在、370兆円の国債を保有している。このままだと、増税が予定されている2019年10月のMBは、約650兆円に達する。

日銀はそれに見合う国債を保有することになるが、内閣府の中長期財政試算では、2019年度時点での国債発行残高は約1100兆円。2019年年央に発行残高の6割を日銀が保有する計算になる(現在約3割)。

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