アメリカ男子も「草食化」 勝負したくない、守られたい、『ハンガー・ゲーム』男子

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物語の中くらいは安定を……

「歌は世につれ」といいますが、確かに、コンテンツ産業の歴史を眺めると、それが実によく当時の社会の風潮を反映していることに気づかされます。

たとえば2000年代の日本では「保守的な価値観を再確認する作品」が、時代の顔だった。たとえば母と自分の物語であったり、コミュニティの人情を扱った作品が大ヒットしています。

2000年代後半に大ブームになったケータイ小説の分野でも、そのテーマの落ち着く先は「真実の愛」。意外と保守的でした。

当時は(今もですが)、新自由主義的な改革を経て、伝統的な社会の規範や価値観が急速に風化していった時期。社会的には長期固定雇用の慣行などは過去のものとなり、プライベート面でも離婚率が上昇。昔と違って「合わないと思ったら離婚する」が、もはや常識となりました。

現実がこのような風景だっただけに、人は物語の中くらいは安定を求めていた。それが2000年代の日本の状況だったと思います。

こうした「コンテンツ目線」で世界を眺めると、ローカルな事情はそれぞれあっても、グローバルな潮流は案外一致している。「草食系男子の登場」のように、極めて日本的な文化のように感じられるものでも、しばしばそれは、世界的な傾向だったりするようです。

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