長期金利は過去最低の0.430%を割るか? 市場動向を読む(債券・金利)

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第4は、ついには高値警戒感が払拭されてしまったことである。その一因として、政府と日銀による国債管理政策への過信が生まれたことも見逃せない。

当時、日銀執行部の人事で、新総裁には、以前より本命視されていた元副総裁の福井俊彦富士通総研理事長(当時)が、新副総裁の一人には、武藤敏郎前財務次官(当時)が内定した。

債券バブル崩壊による金利急反騰のリスクに内心ビクビクしていた債券市場だったが、この人選を見て、『政府(財務省)と日銀が二人三脚で国債管理政策を強化していくだろうから、債券バブルの崩壊は未然に回避されるに違いない』などという我田引水的な思惑を抱いたのだった。

2003年当時との類似点と相違点

以上より、03年当時と現局面の相似点として、1)「質への逃避」、2)日銀金融緩和の長期化期待という2点が見出される。

まず、1)の「質への逃避」は昨今、「リスクオフ」と言い換えられている。10年5月のギリシャ危機を発端とした欧州債務懸念の強まりが世界市場にリスクオフ・ムードを蔓延させた。

南欧の債務危機国から逃げ出した運用資金は、相対的な安全資産と位置付けられた日米やドイツなど北部欧州の国債市場へと流入。ちなみに、スイスの長期金利は現在0.30%台に突入し、日本が打ち立てたくだんの世界記録を更新した。もっとも、債務危機国の国債利回りもこのところは低下傾向だ。リスクオフ基調は転機を迎えたのかもしれない。

半面、2)の金融緩和政策の長期化期待については、当時以上に高まってきているようだ。12月16日に投開票日を迎える衆議院選挙の後、日銀に対し、より積極的で大胆な金融緩和政策を強く求めている安倍晋三・自民党総裁を首班とする自民党政権が誕生する公算が大きくなってきたためである。

なお、日銀は10年10月より、実質ゼロ金利政策と資産買入れ等基金による金融資産購入などを柱とした「包括緩和」という金融政策運営の枠組みを採用している。

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