判官びいきから勝ち馬側へ、変質する浮動層 行動経済で読む選挙

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2つに分かれてしまった有権者たち

さあ、その結果、彼らが浮動化したか、というと、まだだ。これにはワンクッション必要だ。彼らは、政治に関心を失うが、浮動層としてまとまった影響力は発揮できない。単にばらばらなのである。

したがって、正しい政治家の選挙戦略は、彼らの票は欲しいが、あえてそこを無視して、数は少なくとも、特定の利害に強い関心を持つ層にアプローチして、彼らの票を固めることだ。

これは日本新党の登場、新進党の結成などを経て、より強まることとなった。なぜなら、一時は、新党ブームや、政策新人類と呼ばれる人々による政策ブームなどが起きたが、これらのブームは予測しがたい。結局、当選するためには、小選挙区で自分の名前を書かせることが確実にできる、コアな支援者を確立することが勝負を分けることが明瞭になったからであった。

これは、投資あるいは行動ファイナンスとの類推で言えば、ノイズトレーダーの影響が強まったが、そのノイズは単にノイズであるため、予測不可能で、結局はファンダメンタルズを信じるしかなく、コアの支援者の獲得に個々の議員が奔走するしかなくなったのである。

しかし、政治家たち、潜在的な立候補者達のこの行動は、有権者層を二分した。それは労働組合と経営者団体というような意味ではなく、政治的な行動におけるファンダメンタリスト達と、政治による実体的な利益に関心のないノイズトレーダーたちである。

前者は、大都市圏ではなく地方、グローバル大企業ではなく中小企業という傾向は確かにあるが、本質は、政治的な配分に強い利害関係があり、それを求めてまとまって行動するかどうか、ということにかかっている。

彼らは描写しやすいが、それは政治家にとっても同じで、どのような政策を主張すれば彼らの票が得られるかわかりやすく、また、それを求めて政治活動、選挙活動をすれば、票として、数は多くはないが、確実に票読みができるため、この票をコアな票として最重要視した。

当然、ノイズトレーダーたちは、これに反発した。彼らは、都市部から地方へ、若年層から高年齢層へ、国際競争力のある産業から農業、建設業などへの所得移転に反応したのではなかった。政策決定あるいは政治決定のプロセスから除外された疎外感からであった。ノイズトレーダーたちはここに結集したのである。

それは特定利害ではなく、政治を変えること、政治を自分達が動かすという目的で一致したのである。そして、政治の実体的な利益ではなく、結果が目に見える選挙において、活動が顕在化したのは当然だった。

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