規制か自主性か−−未成年向けのネット規制巡り政府と業界が対立

青少年向けのインターネットアクセス規制を巡って、政府とネット関連業界の対立が鮮明化している。「学校裏サイト」など、ネット上に犯罪や暴力、いじめなどを誘発するサイト等が氾濫していることを背景に、政府内では青少年の「有害サイト」へのアクセスを制限する規制法案をまとめる動きが活発化。これに対して、ヤフーなどネット企業は「規制は表現の自由を侵害する可能性がある」などとして、危機感をあらわにしている。

ネットが犯罪やいじめの“舞台”となる問題は年々深刻化している。文部科学省が先ごろまとめた調査によると、学校非公式サイト(いわゆる学校裏サイト)数は「2ちゃんねる」内のスレッドなども含めて3万8千件以上に上る(2008年1~3月で確認できたもの)。うち、「キモイ」「うざい」等の誹謗・中傷語が含まれるスレッドは全体の50%、「死ね」「消えろ」といった暴力を誘発する単語が含まれるスレッドは同27%を占めた。また、警視庁によると、昨年の「出会い系サイト」利用者による被害件数(警視庁に報告があったもの)は1753件。このうち、1100件が18歳未満の児童だという。

そこで政府内で浮上してきたのが、18歳以下の青少年による有害サイトへのアクセスを防止を巡る議論だ。自民党内では青少年特別委員会(委員長=高市早苗衆院議員)が独自規制法案をまとたほか、総務部会も「違法・有害情報対策プロジェクトチーム」を結成、対策案を練っている。民主党内でも同様の委員会が立ち上がっている。

なかでも、高市氏が中心になってまとめた「青少年の健全な育成のためのインターネット利用による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案」は、有害サイトの定義付けるだけでなく、こうしたサイトへのアクセス制限のためのフィルタリング技術採用や、ネット接続業者(ISP)による有害サイトやコメント等の削除徹底を厳格化。違反があれば事業者が罰則の対象になりうるという厳しい内容だ。

一方、総務部会は22日、「有害情報の判断や閲覧制限は表現の自由に関わる問題」との認識から、規制は法的義務ではなく、民間主導の自主規制にゆだねるとする対策案を作成。党内でも意見が集約できていないため、情勢は流動的だが、今国会で法案成立の可能性もあるとの見方もある。

こうした動きに対して、ハイテク・ネット業界は強い反発を示している。23日にはヤフーやマイクロソフト、楽天など5社がそろって“高市案”への反対を表明。同案は1)保護者の意見を十分に取り入れていない、2)何が“有害”な情報であるかは各々の判断にゆだねられるところがあり、有害情報を定義付けるのは表現の自由を侵害する可能性がある、3)産業競争力を阻むおそれがある--として、反対意見書を自民党に提出した。

5社は同時に、今後“ネットリテラシー”向上に向けて保護者向けの教材の作成や勉強会の開催など、自主規制を加速させると発表。「法規制を一概に否定するわけではないが、一番最後に来るべきもので、まずは民間の取り組みを後押しして欲しい」(ヤフーの別所直哉法務部長)と、政府案とは全面対立の様相だ。このほか、ネット関連の有志団体など複数の団体等も今回のネット規制に対して反対を表明している。

ただ、自助努力にも限界があるのが現状だ。ヤフーなどの事業者はすでに自主規制を設けているが、すべての有害サイトやコメントを撤廃・削除するのは難しい。今回、事業者側が提案した啓蒙活動の実効性や効果を疑問視する向きもある。

一方で、携帯電話事業者は18歳未満の利用者に対して自主的に有害サイトへのアクセスを防ぐフィルタリングサービスを開始しているが、有害ではないサイトがフィルタリングの対象になるなど、定義付けだけでなく、技術的な難しさも指摘される。また、法案の対象が、有害情報発信者ではなく、事業者では根本的な解決にはつながらない。ネットというボーダレスなメディアで日本だけ規制が厳しいとなれば、国際的競争力で劣ってしまう懸念もある。

政府内でのネット規制を巡る今後の動向は流動的だが、深刻化するネット上の問題の根絶に向けた対策は必至。現状の自主規制では限界があるなかで、さらなる抜本案を探る道のりは長そうだ。
(倉沢美左 =東洋経済オンライン)

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