自動車業界はソーシャルで大きく変わる 日産再生を担った米セールスフォース・ペラタ氏に聞く

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2つめの接続方法は、スマートフォンなどに搭載されているアプリを車両情報と組み合わせるやり方です。あらかじめそうした仕組みを盛り込んだ自動車であれば、これが可能です。スマートフォンなどから得られた情報は暗号化して自動車メーカーへ送信。自動車メーカーが受け取って蓄積していく、というやり方です。この場合に生成されるデータはアプリベンダーや通信会社にももたらされます。

パトリック・ペラタ
1955年生まれ。フランスのEcole PolytechniqueおよびEcole des Ponts(いずれも理工系高等教育機関)をエンジニアとして卒業。PhD取得(社会経済学)。1984年ルノー入社。99年にルノーが日産に出資した際、カルロス・ゴーン氏と共に日産再生を担う3人の役員の1人として日産に派遣された。2011年4月、ルノーCOOを退任、12年9月エグゼクティブバイスプレジデント、CAOとしてセールスフォース入り。パリ、東京、そしてパリへと住み、現在はサンフランシスコ在住。

3つめの接続方法はスマートフォンと組み合わせるのではなく、自動車そのものに通信機器を組み込んでおくやり方です。こうしておけば直接、自動車メーカーが情報を受け取ることができます。この場合、第2の方法とは異なり、データを完全に自動車メーカーが掌握することになります。

このようにして、自動車とインターネットの接続がものすごいスピードで進展している。アナリストの見解では2017年までにクルマの7~8割が接続されていくとされているが、これはちょっと控えめな予測。もっと前倒しで接続が進んでいくでしょう。

――2017年に7~8割を占めるのは、どの接続方法ですか。

第2、第3の方法の合計です。第1の方法は車内にスマホを持ち込むだけですから、すでにかなり進展しています。しかし、これはできることに限界があります。今後の注目点は第2、第3の方法です。それについて事例を使って詳細に話していきましょう。

運転のクセを見抜いて保険を提案

まずは米国の保険会社の例です。この保険会社はクルマを購入した際、クルマに小さなボックスを搭載するように求めます。ドライバーはその状態で1~2カ月運転するのです。そうするとそのボックスにはアクセル、ブレーキなどの運転パターン、一度に運転する距離、1週間に自動車をどのくらい運転するのか、といった情報が蓄積されます。

保険会社はこうしたデータを解析することにより、そのドライバーにフィットした保険を提案します。リスクを評価しながら、カスタムメイドをした保険を提案できるわけです。この保険会社は、このようなボックスを実装することで顧客を獲得し始めております。既存の大手自動車保険会社にとっては脅威です。

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