ディズニーパークの心くばりはここまで凄い どの職場にも通じるコミュニケーションの妙

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私は「同じぬいぐるみの新品を送って、喜ばせてあげるのかな」と思っていましたが、それを受け取った担当者の考えは、私の想像とは違うものでした。彼はまず、はなちゃんを洗濯して、汚れを落としました。そして、欠けた目は新しいものを縫いなおし、できるかぎりきれいな状態にしました。

こうして見栄えはずいぶんよくなったのですが、やはり新品同様とはいきません。しかし彼は、その状態で送り返すことにしました。そして、はなちゃんに“入院”してもらったという内容の手紙を添えました。おめめの欠けたところは治療して、お風呂にも入って、はなちゃんはきれいになりました、と伝えたのです。

商品というのは、モノの価値だけで存在しているわけではありません。それを手に入れた時の思い出、家に持ち帰ってからの時間も宝物であるはずです。その本質を踏まえたうえで、ぬいぐるみに詰まった思いを理解し、子どもの気持ちも大切にした彼の対応は、まさにディズニーらしいホスピタリティを体現したものでした。

ホスピタリティの本質というのは、「相手のために、相手の期待を超えた行動をする」ところにあります。まずは相手の気持ちに寄り添い、その思いを理解してみましょう。突然そうなるのは難しいですが、まずは、「身近にいる誰かを喜ばせる」ことから始められます。たとえば、頼まれた仕事を締め切りより1日早く仕上げたり、参考になりそうな情報を自発的に調べて付け加えたり、といったことです。

こうして小さくとも相手の期待を超える行動をとり続けていると、周囲からの信頼が集まってくるはずです。

ピンチの時は、「小さな魔法」をかける

たくさんの人に愛されているディズニーですが、その人気ゆえに解決の難しい問題があります。

それは、「待ち時間」です。現在はファストパスなどでずいぶん解消されてはきましたが、それでもまだ「混んでいる」という印象を持っている人は多いかもしれません。人は密集度が高くなるとストレスを感じます。ディズニーでも、待ち時間の長さが引き金となり、ゲスト同士の雰囲気が悪くなることがまれにあります。

ある時、ディズニーランドのカメラセンターに長い行列ができていました。並んでいるゲストたちは、待つことに疲れ、殺伐とした雰囲気でした。そこで、順番を巡るちょっとしたいざこざから、ゲスト同士が声を荒げて言い合いをするという事態が起きてしまいました。

そして近くにいた子どもが、その空気に飲まれて、泣き出してしまったのです。

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