日経平均は1万8000円を回復できるか 株価上昇はどんなに長くても7月で終了?

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今回の株価回復の背景となったドル円相場の上昇については、前週末に米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が早期利上げに前向きな発言をしたことも大きく影響しているだろう。

イエレン議長は5月27日の講演で、6月か7月のいずれかの会合で追加利上げに踏み切る可能性を示した。議長はこれまでハト派的な発言が多く、過去にもFRB高官による利上げ発言を一蹴し、4月利上げが見送られた経緯がある。

しかし、4月のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録では、想定以上に利上げについて議論されていたことが明るみになり、ドル相場の地合いは一変した。その中で、議長が早期利上げに前向きな発言をしたことは、目先のドル上昇を促す可能性がある。

日本株の上昇は最長7月、日経平均の上値メドは?

ただし、議長は利上げ時期については「数カ月内」と幅を持たせている。6月23日に英国の欧州連合(EU)離脱に関する国民投票が実施されることを考慮すれば、利上げは早くて7月になるとみるのが妥当であろう。その間にドルが安定する一方、米国株が堅調に推移すれば、日本株にもポジティブな材料になる可能性は十分にある。

これまで円高に苦しめられてきた日本株が、米国の金融政策変更に伴うドル高の恩恵を受ける形で上昇に転じる可能性が高まりつつあることは喜ばしい。しかし、ドル円の上昇の賞味期限は、最長で7月のFOMCまでであろう。

つまり、7月26・27日のFOMCで利上げが実施される見通しが強まる過程で、ドル円は高値をつけ、その後は利上げ織り込みにより下落に転じると考えられる。

今年のドル円の値幅はすでに過去15年平均と同水準に達しており、105円半ばを割り込むほどの円高になるとは考えにくい。しかし、一方で、米国が基本的にはドル安を志向していることを考慮すれば、115円を大幅に上回って円安が進むこともないだろう。

筆者は、ドル円は114円台までの戻りが精いっぱいとみているが、その場合の日経平均株価の戻りは1万7500円程度と、上値が限定的になるかもしれない。日経平均の予想PER(株価収益率)15倍までの上昇を許容するのであれば、1万8000円までの戻りも期待できるが、この水準を超えるのは、よほどの好材料でもなければ難しそうだ。

足元では、米国株が高値を更新できるかの非常に重要な局面にきている。もし、ドル高が嫌気され高値更新に失敗するようだと、再びドル安基調が強まることになろう。これは日本株にはネガティブに作用することになりそうだ。

もともと、今年は米大統領選が実施される年でもあり、過去の歴史からすると相対的には株価が上がりにくい(1952年以降の16回におけるS&P500の株価騰落率は平均6.6%)傾向にある。現状の米国株は筆者の想定を超える堅調さを維持しているが、このまま平穏に終わるとも思えない。結果的にFRBの利上げがきっかけとなり、再度不安定な展開になるものと考えている。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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