安倍総裁、300議席取る方法教えます 兵法三十六計で占う衆院選(上)

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3)借刀殺人 (しゃくとうさつじん)

同盟者や第三者が敵を攻撃するよう、仕向ける策略である。

自民党にとっては遠くの味方との協力よりも、近くの敵を叩かなければならない。うるさ型の共産党を同盟者である公明党に攻撃させると、自民党の守備は万全になるように、今回のケースでは公明党が石原慎太郎氏や橋下徹氏をもっと叩くようにし向けなければならない。だが、焦点が定まらないために決して思い通りにはなっていないようだ。

本来、安倍晋三総裁は、自分が前に出る必要はないのである。演説は上手いが議論にはそれほど強くはないのだから、表には石破茂を出すべきである。人の刀で相手を刺すべきだ。安倍総裁にはそうしたズルさがないから人気があるのだが、今後の運営を考えると悪人にならないと「安部チャン」もまた胃を痛めてしまうだろう。

4)以逸待労 (いいつたいろう)

これは「剛よく柔を制す」作戦である。

直ちに戦闘するのではなく、敵を撹乱して主導権を握り、敵の疲弊を誘う戦略である。

自民党はもはや民主党を叩くのではなく、維新の会を今のうちに叩いておかないと選挙後の運営でトラブルが起こるだろう。石原慎太郎氏と橋下徹氏とは気が合うが「維新の会」は不慣れな素人の集まりである。実務にも人を得ていないから問題が発生するのでいづれは内部分裂が絶えなくなるだろうと予見する。

この点でも今回のケースでは自民党は大変助かっている。というより民主党の自滅が全てだというのが今回の選挙の特徴である。自民党の候補者には返り咲き候補が多い。元議員さんがどのような戦いを展開するかが勝敗を左右する。

元議員は、地盤も看板もある候補者だから不慣れな新人候補や第三極の落下傘部隊には負けるわけには行かないのだ。自民党への風は吹いているのだから、返り咲きのドラマが全国で見られることを予想する。

5)趁火打劫 - (ちんかだごう)

「川に落ちた犬は棒で叩け!」という諺と同じ意味だ。敵の被害や混乱に乗じて行動し、利益を得る作戦である。日本人にはなかなかできないが、中国や韓国では当たり前の戦術である。

現在の民主党の被害は相当のものである。自民党は勢いを借りて民主党から逃げ出した脱走者を引き抜いたり、影で塩を送ったりしている。一方、鳩山由紀夫氏が自滅し、菅直人氏も苦戦を強いられ、小沢一郎氏の精一杯の政略は未来の党への鞍替えだ。

だが、今こそ小沢一郎氏を叩く時だが、自民党はまだ優しい方である。民主党が中道左派でなくなってきたことで、選挙民にとっては自民党も民主党も同じようにみえて仕方がない。民主党は自民党との差別化ができないから、浮動票を思ったほど取れないだろう。

一方、選挙後は自民党と民主党の距離が近づいて、公明党が離れていくケースもありうるのではないか。
鳩山、菅、小沢の「三兄弟」の「関係修復」は時すでに遅しであるが、意外に政局の裏側では分裂工作が行われていたのかも知れない。

6)声東撃西 (せいとうげきせい)

「東に向かって声を出すと見せて、実際は西を撃つ」という話だ。だが、陽動作戦によって敵の動きを牽制して、防備を崩してから攻めるという古典的手法である。

この場合、自民党にとっての陽動作戦は日本維新の会に向けるべきである。

例えばみんなの党と選挙協力をするように見せるとか、(実際には必要がないが)それを部分的に実行するぐらいの荒技で、維新の会を追い落とすのが声東撃西の策略である。

ところが、橋下徹氏の維新の会に石原慎太郎氏のグループが入ってきて一層、右寄りになり、政策はぶれてきたが、逆に自民党と言っていることが近づいてきたので、選挙後にはまた新しい動きになるかも知れない。

以上の6通りが自民党が行うべき定石であり、選挙戦後半まで油断大敵の精神を忘れなければ、意外な大勝で終わるかも知れないと予見している。現有の全議席(118議席)が倍増以上になる可能性が高い。

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