TOB完勝ならPGMは営業利益2.4倍 小が大のむ買収の舞台裏

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来期(PGMは13年12月期、アコーディアは14年3月期)については、アコーディアは12月3日にTOB反対意見表明とともに発表した新中期経営計画で示した会社計画があるものの、PGMはまだ会社計画を明らかにしていない。また、アコーディアの新中期経営計画はあくまでも自社単独での成長施策を採ることを前提としているため、PGMの連結子会社になった場合は必ずしも計画どおりにいくとは限らない。

そこで、仮に「会社四季報」新春号(12月14日発売予定)で東洋経済が独自予想したPGMの13年12月期見通しとアコーディアの14年3月期見通しを単純合算すると、売上高は1710億円、営業利益は258億円、営業利益率は15.1%となる。東洋経済予想による来期のPGM単独での業績見通しは、売上高780億円、営業利益は108億円、営業利益率が13.8%。アコーディアを連結化できた場合の業績変化率は、売上高が2.2倍、営業利益が2.4倍となり、営業利益率の改善効果もやはり大きい。

のれん代はなさそうだが、支払金利は発生

なお、PGMのアコーディアに対するTOB価格は8万1000円であり、アコーディアの1株当たり純資産8万8438円(12年9月末時点)を下回る。このため、PGMがTOBでアコーディアを連結子会社化できたとしても、のれん代(一般管理費に計上され営業利益のマイナス要因となる)は発生しない見通しだ。

また、PGMはTOB資金のうち80億円は自己資金で手当てするものの、残りは親会社である平和(パチンコ・パチスロ機器大手)からの借入金で賄うとしている。TOBへの応募株数が上限の50.1%に達した場合に必要となる買収資金は425億円前後。差し引き345億円が親会社からの新たな借入金となり、営業外の支払金利は年間で数億円規模以上が増加することになりそうだ。

PGM側はTOBに成功しアコーディアとの経営統合にこぎ着けた場合のシナジー効果として、両社共同での顧客データ分析やマーケティング実施による集客力アップ、共同購買や本社機能効率化などによるコスト削減、信用力上昇による資金調達力増大などを掲げている。

とはいえ、アコーディア側が“敵対的買収”への反発を強めているだけに、経営統合までの地ならしを進め、シナジー効果を十全に発揮できるまでには、時間が掛かる可能性もありそうだ。

 

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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