穀物中心に原材料高騰、川下では低価格競争 【産業天気図・食品】

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昨11年度前半は東日本大震災の直後にあたり、食品業界は「買いだめ特需」に沸いた。品薄感から消費者がカップ麺やレトルト食品、調味料などを買い占めに走り、値引きや特売、広告宣伝をしなくても売れる状況に。その結果、一時的に食品メーカー各社の利益がハネ上がった。

だが、11年度後半から徐々に震災前の状況に戻りつつあり、消費者の財布のひもが固くなる中、特売や値引き競争、広告宣伝が復活。12年度前半は前年同期の反動から、多くの企業が減益となった。

12年度後半以降も、消費者の節約志向は続くと見られる。同じく震災後の「買いだめ特需」剥落の影響を受けた食品スーパーなど小売り各社は、さらなる低価格戦略で集客をはかっており、定番食品を中心に値下げをするケースが増加している。

低価格化の波も

さらなる脅威は、小売り各社があらゆる品目で自主企画(PB、プライベートブランド)商品を拡充していることだ。しょうゆや中華調味料など嗜好性が強いカテゴリーでは、メーカーのNB(ナショナルブランド)が依然として強いが、パンや菓子、総菜などではPBが幅をきかせるように。小売り各社は、自社にとって粗利のよいPBの品目を一段と拡充する方針だ。

低価格戦略と一線を画し、PBとの差別化を図るためには、相当の付加価値が必要になる。ただ、東洋水産の袋麺「マルちゃん正麺」、密閉容器に入ったキッコーマンの「しぼりたて生しょうゆ」のように、消費者の支持を得る新商品も出てきている。消費者のニーズを探り当てるため、メーカーの模索が続きそうだ。
 

12年10月~13年3月 「曇り」

13年4月~13年9月 「曇り」
平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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