ホンダの最新鋭工場は一体、何がスゴいのか 寄居工場の生産ラインはこんなにも効率的だ

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「寄居工場を新設した理由は、国内で年産25万台の能力を追加するためではありませんでした。国内での生産能力は従来の100万台で十分であり、最大の目的はマザー工場を作ることだったからです。狭山工場のラインの一部を移設することになるので、約半数の従業員の勤務地を狭山から寄居に変える必要もありました。

そうした社員が通勤できる圏内で、これだけの広さの土地を探した結果、わずか3カ所しか候補がありませんでした。なかでも寄居は、交通の便、地域の理解、地権者の理解など、すべての条件を満たしていました。狭山工場に協力してくれているサプライヤーにとっても、交通の便が良い範囲だと考えています」

海外と部品調達や輸出などのやりとりをする場合は、臨海部に工場があると有利かもしれないが、寄居工場は国内向けの生産が中心で、生産プロセスも集約しているので、内陸部でも問題はない。

樹脂と鉄板から完成車まで一貫生産

寄居工場の敷地は広大ではあるが、南から北に向けて生産工程のプロセスが流れる仕組みになっている高効率でミニマムな設計だ。ボディに関しては、金属のロールや樹脂からクルマが組み立てられるまで一貫した生産ができる。鉄やアルミのプレス加工に加えて、鋳造や機械加工にも対応しており、樹脂成形、塗装、完成車組み立てのラインまでが効率よく収められている。エンジンは、地理的にも近い小川工場で生産されて搬入される。2200人もの従業員が通勤しているため、敷地内にはずらっとホンダ車が並ぶ広大な駐車場がある。

まずはプレス工場からご紹介しよう。ここでの見どころは、レーザーによる加工だ。通常のプレス工場では、アルミや鉄のロールからドアやサイドパネルがプレスで打ちぬかれるので、工場内に入ると、ガシャーン、ガシャーンとうるさい音がするが、寄居工場のプレスラインは比較的静かだ。最大の秘訣は、レーザーによるパーツの切り出しを導入した点だ。

プレス加工では、モデルごとに金型を変えなければならず、新型車に変えるときには高価な金型を新規に起こす必要がある。レーザーなら、プログラムの変更だけで対応できる。また、バリといって金属の端がギザギザになってしまう現象が出にくいのもメリットだ。また、大きなサイズの部品では、繰り抜いた内側の素材を別の部品に活用して、素材を無駄なく使うこともできる。高張力鋼板にも対応しており、ここで加工した部品を狭山工場でも使っている。

高速サーボプレスの導入も新しい。プレス加工では、複雑な金型を使うので局所的に力がかかってしまったり、アルミや高張力鋼板など、加工が難しかったりする素材があった。そのため、速度を落として、慎重にプレス成形をしていた。今回、ホンダが導入した高速サーボプレスは、圧力をかける部分をサーボアンプで細やかに制御するので、その名のとおり、高速で加工できる。さらにプレス工程間の時間を短縮できるライン設計にもなっている。

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